罰 ページ22
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『ん…っ、あ』
敏感な場所に触れる度、
手の甲で隠された口から嬌声が零れる。
「なんで、声、我慢すんの」
涙目で俺を見つめるAが可愛くて、
つい意地悪したくなってしまう。
触れ合う肌と肌の温度が心地いい。
人って、こんなにも温かかったのか。
口を隠す腕を掴み、
痛々しく腫れる痣に口付けを落とす。
『ごめ、んね…汚い身体で、』
「綺麗だよ、大丈夫」
丁寧にひとつずつ口付けをし終わると
はずかしい、とAは顔を手で覆った。
その仕草でさえ、愛おしくて仕方ない。
今、今この瞬間だけは
俺だけの、俺だけのものでいて欲しい。
歪んだ独占欲だとは理解している、
それでも止められない。
侑が付けたであろうキスマークの上に
上書きするように優しく歯を立てる。
『す、な…っ、ん、』
物欲しそうにこちらを見るAと目が合い、
噛み付くようにキスをしながら
身体を重ねて。
俺を焼き付けるように腰を揺らすと
その度にAは甘い声を洩らした。
『あ、…っ、あつ、む、』
不意に、熱っぽい息と共に吐き出された
その名前に身体が硬直する。
Aに目をやるけど、
俺のことを侑と呼んだことに
気づいてないみたいだ。
それとも本当に侑だと思っているのだろうか。
どっちにしろ、今だけは
俺を見てくれると思った、のに。
「俺、侑じゃないよ、A」
何度も何度も望んだ交わる夜は
とても幸せで、とても虚しかった。
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作者名:ぽよたろう | 作成日時:2022年6月4日 17時