罰 ページ20
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『いつも、ごめんなあ…』
傷口を処置していると、
ぽつり、Aが呟いた。
「悪いのはAじゃないだろ」
痛々しい痣に指を這わせる。
あの後、Aをおぶって
俺の家まで連れて帰ってきた。
それから夕食を作って
2人で食べて、風呂に入り、今に至る。
『私、何があかんかったんかな…』
一通り手当てが終わると、
Aが俺の胸元に顔を埋めてそう言った。
侑が無闇に暴力を振るったりする奴じゃない、
そんなことは俺がよく分かってる。
だけど目の前にある痛々しい痣が
血の滲んだ傷口が、事実だと物語っていて。
____俺は、つくづく最低だと思う。
理性と衝動が混濁した脳内で
他人事のように思った。
触れたら壊れてしまいそうな
弱々しい背中に腕を回す。
見つけろ、探せ、間違えるな。
侑は完全に俺の気持ちに勘づいてる。
「俺なら、そんな思いさせない」
頭の中では分かっていても
口を割って出たのは酷く浅はかな言葉。
違う、そうじゃない、違う、
「何かあったら助けるから話し合ってみな」
そう言うんだ、分かっている、
掛けるべき言葉も 正しい慰め方も
分かる、分かってるのに、
『なんで角名がそんな顔すんねん』
桜が散った後のような
綺麗でどこか寂寥感を掻き立てるそんな笑顔で
Aは俺を抱き締めた。
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作者名:ぽよたろう | 作成日時:2022年6月4日 17時