- 罪と罰 -【角名倫太郎】 (ページ18)

今日:18 hit、昨日:5 hit、合計:8,468 hit

罰ページ18

△▼

それから、また、時は過ぎた。

毎秒、毎分、募る想いに

身を焦がしながら

気付かないフリをして蓋をする。

いつも通りでいい、

今まで通りでいい。

確かにそう、思っていたのに。

俺達の関係を変える出来事が訪れる。

．

．

．

秋風が吹き、肌寒くなってきた頃だった。

金曜日の日暮れ、藍色が深まる時間。

いつものように出張で家に帰らない

と両親に言われたので

夕食と明日の飯を買って帰る途中だった。

いつかの夜のように

住宅街の塀沿いにもたれ掛かる女を見つける。

長い髪が垂れていて、よく表情は分からない。

ただ、鼻血が出ていて

右頬に殴られたような

紫色の痣が出来ていることだけ分かる。

｢…A｣

持っていたスーパーの袋を

その場に置いて駆け寄る。

｢A!! おい!!｣

垂れた髪の毛を掻き上げ、顔を確認する。

Aだ。間違えるはずない。

｢…どうしたの、ねえ｣

この前と違って

何度名前を呼んでも揺さぶっても

一向に目を開けないAに冷や汗が垂れる。

口の端から垂れた一筋の血液が、

街灯に照らされて、俺の目に反射した。

胸に耳を当てる、

鼓動はしっかり聞こえる。

『す、な…?』

虚ろに開かれた瞳が、俺を見据える。

言葉にならない叫びが

聞こえた気がした。

「たすけて」と

言われた気がした。

△▼