Another Story / Ephemeral Serenade 04. ページ9
-Tokumaru Side-
そして、その数週間後。
彼女は薬品研究所の爆発現場で感電し、意識を失った。
まるで眠っているかのように横たわる彼女を前に、手の震えを抑えることはできなかった。
無理にでも、嫌われてでも、どんなに困らせてでも
好き、と言っておけば。
頭に浮かんだのはそれだけで。
小さな言い訳を並べて、その2文字を口にしなかった自分に嫌気がさす。
毎晩、自販機の前で彼女が見せた困ったような笑顔が頭から離れない。
まだ意識が戻らない、という連絡を聞く度、後悔の念が幾度となく押し寄せた。
今日も彼女のベットサイドには立ち寄れない。
ICUで眠る彼女の傍らには常に音羽先生がいた。
�爐泙澄◆◆△泙聖笋蓮◆�貴方に好きって伝えられていません、、！お願いだ、、目を覚ましてください、、、！��
酷く疲弊し、やつれた様子の彼を見る度、あの日の言葉がフラッシュバックする。
俺と同じ、いや、俺以上の後悔を募らせているであろう彼にかける言葉はまだ見つからなかった。
帰り際、なんとなくICUを覗き様子を伺う。
モニターが鳴らす電子音と、彼がキーボードを叩く音だけが響く病室。
搬送された1週間前と何も変わらない状況に、そっとため息をつく。
無意識に滲み出た涙が零れないうちに、その場を後にしようとした時、PCから顔を上げた彼と目が合った。
俺が向かいの椅子に腰かけるなり、彼はおもむろに口を開いた。
「自分に、腹が立ちます。」
「、、、」
「来週でいいか、次2人で会った時でいいか、って。先延ばしにしていました。彼女の答えを聞くのが怖くて。好きだ、というだけなのに。私にはそれができませんでした。」
「、、俺もッスよ。」
「、、、、？」
「A先生に、伝えたいことは伝えられるうちにねって。ついこの間教わったばっかだったのに。勝手に恥ずかしがって。勝手に怖がって。結局何も言えなくて。」
「何を、、伝えたかったんですか。」
彼と視線がぶつかり、思わず言葉に詰まる。
まるで、時間が止まったかのように。
「俺も好きだったんですよ、って。でも、音羽先生の隣にいる貴方は、心の底から幸せそうでキラキラしてるから。俺はA先生のこと好きだったけど、これからはちゃんと2人を応援します、って。言いたかったんスよ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 384人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Ria(プロフ) - とても素敵なお話でした この後の2人がすごーく気になりますが(笑) (11月22日 8時) (
レス) @page47 id: b18326fb22 (このIDを非表示/違反報告)
mi(プロフ) - 琉愛（るあ）さん» 琉愛様→最後までご覧頂きありがとうございます…！楽しんでいただけたようで嬉しいです〜！ (9月20日 1時) (レス) id: 9001ca60a4 (このIDを非表示/違反報告)
琉愛（るあ）(プロフ) - 最高の作品でした！！！完結まで書いてくださりありがとうございます！執筆お疲れ様でした。本当に本当に最高の作品をありがとうございます！ (9月19日 21時) (レス) @page47 id: abb9ea5a9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mi | 作成日時：2023年8月2日 23時
