After story 22. ページ43
-Hina Side-
ゆるりとした風が吹く、よく晴れたある日。
いつからか、なにかが。
ほんの少し物足りなくなったTOKYO MERのスタッフルーム。
今の私たちに足りないのは、大好きなあなたの鈴のように鳴る声と、花が咲いたかのような笑顔。
今日をもう随分と心待ちにしていたな、なんて思ってしまう。
自らが抱える受け持ち患者のカルテに目を落としては、すぐに壁にかかる時計に目をやる。
「比奈先生、時計みてばっかでなんも進んでないッスよ。」
「、、、うるさいなぁ。」
「徳丸くんだって、工具の手入れするとか言ってるけど、手動いてないよ。」
夏梅さんの一言に、臨床工学技士兼機工士の彼はバツが悪そうに笑う。
「仕方ないですよ、皆さんこの日を待ち望んでいたんですから。」
「はやく、元気な顔が見たいですネ。」
冬木先生と、ミンさんの言葉に、目を合わせずとも全員が頷いた。
時は遡ること2年前。
YOKOHAMA MERとの交換研修が終了し、彼女が無事職場復帰を果たした数日後、
彼女＿＿AA は突然東京海浜病院を去った。
何も言わずに。
今思えば、恐らくそれは彼女なりの配慮で。
お別れを惜しむよりも、命を救いたい。
続けていれば、また会えるよ。きっと。
もしも、彼女が此処を去ることを知っていたとして、何か私に言葉を残してくれるのならば、きっとこんな事を言ってくるのだと思う。
だって、どこまでも医者で居続ける姿には、もう何度も驚かされているのだから。
その後、
混乱する私たちの前に現れた赤塚都知事と音羽統括官は耳を疑うような決定事項を告げた。
「MERを広める為とはいえ、まさかA先生がマサチューセッツまでレジデントに行くとは思わなかったっスけどね。」
「まぁでもA先生、元々英語も話せたし、もちろん腕もいいし、私たち看護師の中でも話題になるほど患者さんとのコミュニケーションをとるのが上手かったから。」
「まさに、量才録用ってことですネ！！！」
「ミンさん、難しい言葉知ってますね〜。」
適任なのは全員が分かっていた。
でも、まさか2年間も会えなくなってしまうとは。
彼女に鍛え抜かれた私たちでも、心に穴が空いてしまったようだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 385人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Ria(プロフ) - とても素敵なお話でした この後の2人がすごーく気になりますが(笑) (11月22日 8時) (
レス) @page47 id: b18326fb22 (このIDを非表示/違反報告)
mi(プロフ) - 琉愛（るあ）さん» 琉愛様→最後までご覧頂きありがとうございます…！楽しんでいただけたようで嬉しいです〜！ (9月20日 1時) (レス) id: 9001ca60a4 (このIDを非表示/違反報告)
琉愛（るあ）(プロフ) - 最高の作品でした！！！完結まで書いてくださりありがとうございます！執筆お疲れ様でした。本当に本当に最高の作品をありがとうございます！ (9月19日 21時) (レス) @page47 id: abb9ea5a9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mi | 作成日時：2023年8月2日 23時
