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｢ねえ、もう私歩けるのに。｣
大きめのグレーのパーカーを羽織った彼女は、そう言って不満気な表情で振り返る。
｢捻挫してるんだ。それに、頭だってまだ安静にしないと、、、｣
｢もー、尚はちょっと過保護すぎるよ。｣
｢俺たちは神様に散々振り回されてるんだ、過保護くらいでちょうどいいだろ。｣
｢ふふ、そうかもね。｣
目の前に流れる綺麗な髪を梳くと、ふわっと甘い香りが広がった。
鼻に入るそれが、触れた手から伝わる温度が、抱き寄せた身体が刻む鼓動が、彼女が生きていることを示していた。
｢ねぇ、尚。｣
｢ん？｣
車椅子の正面にまわり、彼女と目を合わせる。
｢わたしのこと、助けてくれてありがとう。｣
長い睫毛に縁取られた瞳はゆっくりと瞬かれ、零れた涙は彼女の頬を滑り落ちた。
｢後悔してる。あの時、一瞬でも生きることを諦めようとしたの。尚が、みんなが、居なかったら、、、私、、、。｣
｢後悔することない。救命医として下した判断は、なにも間違ってない。それに、Aのああいうところは出会った時からかっこいいと思ってるし、尊敬してるから。
でも四六時中、完璧な医者で居ようとしなくていい。
俺たちがAのことを信頼している分、Aだって、もっと俺たちのこと頼っていい。自分の気持ちをそんなに飲み込まなくていい。
生きたいって、言っていいんだ。｣
嗚咽しながら涙を流す背中に手を回し、壊れないようにそっと抱きしめる。
この小さな背中は、想像できないほどの恐怖やプレッシャーに打ち勝ってきた。
でももう、1人でその全部を抱えなくたっていい。
重いものがあるなら、2人で持てばいい。
悩みだって、不安だって、
半分持たせて欲しい。
貴方の隣で、生きていくと決めたから。
｢いっしょに生きようとしてくれて、ありがとう。私、尚に出会えてよかった。｣
顔を上げた彼女は、いつものように微笑んでそう言った。
貴方の紡ぐまっすぐな言葉に、それを相手に素直に伝えられる優しさに、もう何度救われただろう。
貴方のように直接言葉にするのは、なんだかすこし恥ずかしいから
こちらこそ、の気持ちと
精一杯の愛を込めて。
ほんの一瞬、唇を重ねた。
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Ria(プロフ) - とても素敵なお話でした この後の2人がすごーく気になりますが(笑) (11月22日 8時) (
レス) @page47 id: b18326fb22 (このIDを非表示/違反報告)
mi(プロフ) - 琉愛（るあ）さん» 琉愛様→最後までご覧頂きありがとうございます…！楽しんでいただけたようで嬉しいです〜！ (9月20日 1時) (レス) id: 9001ca60a4 (このIDを非表示/違反報告)
琉愛（るあ）(プロフ) - 最高の作品でした！！！完結まで書いてくださりありがとうございます！執筆お疲れ様でした。本当に本当に最高の作品をありがとうございます！ (9月19日 21時) (レス) @page47 id: abb9ea5a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mi | 作成日時：2023年8月2日 23時
