After story 18. ページ32
-Your Side-
｢あかねちゃん、大丈夫？｣
目の前で横たわる女子高生にもう一度声をかける。
幸い残された患者3人のうち、ようやく2人はバイタルが安定してきた。
心配なのはこの子と、、
｢うん。先生は、、？そんなに、、血流して、、痛くないの、、？｣
｢私？これくらい大丈夫だよ。さ、もうすぐ助けが来るからねっ。｣
頭の痛みは、静かに私の体力を蝕んでいた。
彼女にかけた言葉が、頭に響き、殴ったかのように揺らす感覚に陥る。
これは、意識を失うのも時間の問題だな。
少しでも、身体が動くうちに。
できることを。
タイムリミットは、刻一刻と迫っていた。
近くにあった真新しいトリアージタグを手に取り、彼らに施した処置とこのあとすべき処置を事細かに記す。
私が力尽きたとしても、彼らだけは助かるように。
｢ねえ、A先生。｣
｢ん、？なぁにあかねちゃん。｣
｢私、ここで死ぬのかな。｣
｢大丈夫だよ。私がいるから。｣
｢明日、彼が誕生日なの。｣
｢、、、、｣
｢生まれてはじめてできた彼氏。彼、私がここで死んだら泣いてくれるのかな。｣
｢あかねちゃん、、大丈夫だから、、。｣
｢私、彼のこと大好きなのに。｣
遠い、深い、記憶の中のあの日。
忘れもしない、あの光景。
今でも、鮮明に思い出せる。
彼は、自分が助からないとわかった時、
こんな気持ちだったのだろうか。
私を、思い浮かべてくれたのだろうか。
高校生の頃、交通事故で亡くした彼。
人の命を救いたい、目を輝かせてそう語っていた。
夢を抱きまっすぐに生きている、そんな彼が羨ましくて。
でもそんな彼と出会えたことは、私のいちばんの誇りで。
まだ幼かった私なりに、愛していた。
しかしそんな彼の夢を、私の希望を、神様は一瞬で奪い去った。
助ける術もなく、ゆっくりと温度を失っていく彼の隣で枯れるほどに涙を流した。
私の声は、彼には届かなかった。
｢あかねちゃんの彼氏、泣かせる訳にはいかないなぁ。必ず助かるからもう少しだけ頑張ろうね。｣
私が医者になったことで、涙を流す予定だった人がひとりでも少なくなればいい。
今は亡き彼が叶えられなかった夢を、私が代わりに叶えて、2人分助ければいい。
彼を亡くしてからずっと、それしか考えていなかったのに。
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Ria(プロフ) - とても素敵なお話でした この後の2人がすごーく気になりますが(笑) (11月22日 8時) (
レス) @page47 id: b18326fb22 (このIDを非表示/違反報告)
mi(プロフ) - 琉愛（るあ）さん» 琉愛様→最後までご覧頂きありがとうございます…！楽しんでいただけたようで嬉しいです〜！ (9月20日 1時) (レス) id: 9001ca60a4 (このIDを非表示/違反報告)
琉愛（るあ）(プロフ) - 最高の作品でした！！！完結まで書いてくださりありがとうございます！執筆お疲れ様でした。本当に本当に最高の作品をありがとうございます！ (9月19日 21時) (レス) @page47 id: abb9ea5a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mi | 作成日時：2023年8月2日 23時
