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伊達に何年も救命医を続けてきた訳では無い。
目の前の命に、助けるための順位をつけざるを得ない時だってあった。
この状況の私たちを、誰かがトリアージするとしたら。
きっと、そのタグは限りなく黒に近い。
嫌でも脳裏に浮かぶ、彼の顔。
それでも、私に残された時間が少ないのなら。
私は最期まで医者で在り続けたい。
「千住さん。私の判断で、こちらの救出よりも先に、その女性の処置をはやく進めるように伝えてください。先程診た時はSpO2が下がっていたので。気をつけて。」
雑音しか流れないイヤホンマイクを地面に置き、声を張り上げて壁の向こうの彼に叫ぶ。
「了解、そっちの救出も急がせる。」
私を安心させるかのように声をかけてくれた彼に感謝し、目の前の命と向き合う。
「もうすぐ助けがくるから、頑張ろうね。」
意識を朦朧とさせる男の子に呼びかけた途端、途切れそうになる自分の意識をギリギリのところで食い止める。
「バイタル、チェックしなきゃ。」
更に痛みを増す自分の頭部に手をやり、私は無理やり立ち上がった。
私たちに残された時間は、そう長くはなかった。
-Otowa Side-
何度呼びかけても応答のない無線。
最悪の事態が脳内を埋めつくし、居てもたってもいられず暗闇の中を走る。
やがて目に入ったのは、渦高く積もった瓦礫の山、その麓に倒れた女性、隣に座り込んで換気を続ける千住さんと、必死に救助を行うレスキュー隊。
しかしそこに、鮮やかなターコイズブルーを纏った女性は居ない。
「千住さん。」
「妊娠36週だ、呼吸状態が悪く、、、」
横たわった女性の容態を説明する彼の声を遮ったのは、
「音羽先生、、！？その女性は頼みます。ちゃんと、赤ちゃん産ませてあげて、、。」
絞り出したかのようなか細い彼女の声。
「A、、！大丈夫なんだな！？そっちは！」
「こっちは、！重症の人も居るけど、私がなんとかするから。尚は、とにかく目の前の患者さんに集中して！」
いつもとちがう、まったく余裕のない声色。
たった一瞬の会話で、彼女が置かれているであろう状況に気づいてしまう自分が嫌になる。
それでも今は、彼女を信じることしかできなくて。
「わかった。そっちは任せた。」
「うん！ありがとう、、、！！」
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Ria(プロフ) - とても素敵なお話でした この後の2人がすごーく気になりますが(笑) (11月22日 8時) (
レス) @page47 id: b18326fb22 (このIDを非表示/違反報告)
mi(プロフ) - 琉愛（るあ）さん» 琉愛様→最後までご覧頂きありがとうございます…！楽しんでいただけたようで嬉しいです〜！ (9月20日 1時) (レス) id: 9001ca60a4 (このIDを非表示/違反報告)
琉愛（るあ）(プロフ) - 最高の作品でした！！！完結まで書いてくださりありがとうございます！執筆お疲れ様でした。本当に本当に最高の作品をありがとうございます！ (9月19日 21時) (レス) @page47 id: abb9ea5a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mi | 作成日時：2023年8月2日 23時
