Terminal ⅱ (ページ36)

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翌々日。
東京駅まで電車で迎えに行こうとしていた彼女を引きとめ、車を出す。

「あ、遥斗きた。」

そう言って助手席のドアを開け、走ってくる甥を迎え入れた。

「Aちゃん！！！！！」

「遥斗、久しぶり！！遠かったでしょ～～」

「ゲームしてたからすぐだったよ！」

彼女に連れられ、後部座席に乗り込む幼い彼は、運転席に座るこちらを見て不思議そうな表情を浮かべる。

「えっと、、、、？」

「私の彼氏の尚だよ。ご挨拶して～～～。」

「目黒遥斗です。尚くん、ありがとうございます。」

想像していたよりもずっと礼儀正しい彼は、にっこりと笑った顔がどこか彼女に似ている気がした。

「ママがAちゃんにお土産って！」

「え～莉緒が！あとでママにもお礼しなくちゃ！ありがとうね！」

成り行きで2人と同じ家に帰る。
久しぶりに足を踏み入れた彼女の部屋は、前と変わらず綺麗に片付けられていた。

「ママとパパかね！！」

楽しそうに両親のことを話す彼をまるで母親のように話を聞く姿。
もし彼女に子供ができたら、こんなにも優しく温かく、愛を注いでいくのだろうか。

その様子を微笑ましく眺めていると、彼女のスマホが小さく音を立てた。

「遥斗、電話だ。ちょっとごめんね。」

「うん、、？」

「＿＿Aです。お疲れ様です。はい、昨日の方。今、赤羽先生は？あーーー、そしたらすぐに心外の上野先生にコンサル頼んで。今日は大きなオペなかったはずだから。あと医局に立川くん居たらオペの準備と補助お願いして。私10分で着きます。はーい。お願いしまーす。」

「どうした？病院？」

眉を寄せ、なんだか難しい顔をして電話を切る彼女にそう問いかける。

「うん、昨日搬送されてきたICUの患者さんが急変した。当直の同期が他のオペ入ってて、執刀できる医師がいないみたい。ごめん、ちょっと行ってきてもいい？」

「もちろん、気をつけて。帰り迎えに行くから連絡してね。」

「ありがと。また後で。」

スマホと仕事用の鞄を掴み、彼女は瞬く間に家を飛び出した。

「どうしたの？」

幼い彼は不安そうな顔でこちらに問いかける。

「患者さんを、助けに行ったんだ。」

「そっかぁ。ねぇ、尚くん。」

「、、、ん？」

「尚くんも、Aちゃんと同じお医者さんなの？」

無垢で、純粋で、何気ない質問。
たった一つのその問いは、以前共に生きようとした運命を引き裂こうとしたそれで。

一瞬、ギュッと胸が締め付けられた。