Terminal ⅱ (ページ35)

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After story 11. ページ35

-Otowa Side-

「甥っ子？」

「そうそう。」

向かい合って朝食を食べる金曜日の朝。
ふいに彼女の口から出たワードを聞き返す。

「姉の息子なんだけど。日曜からね、東京遊びに来るの。最初は兄のところ泊まる予定だったのに、あの人急に出張入っちゃったみたいでさ。1週間面倒見てくれないかって。」

「それって、Aの家にってことだよね。」

「もちろん。だから明後日からしばらく尚の家泊まれないや。ごめんね、急で。」

地元で自営業をする旦那さんを手伝いながら、子育てをする彼女の姉、莉緒さん。
小学4年生の息子、遥斗くんが居るということは、以前彼女からも聞いていた。

彼女が毎晩のように家に泊まりに来なくたって、自分が会いに行けばいい話。

なんなら、きっと病院でだって会える。

頭では仕方ないと分かっているのに、それでも毎日隣に居た彼女が来週は居ない、という事実から思わず目を背けたくなってしまう。

「なーに尚、寂しいの？難しい顔してるよ。」

こちらを見て、ふふっと可笑しそうに笑う彼女。
悔しくもその言葉は当たっていた。
そう、単に自分は彼女が会いにこない夜が寂しいだけだ。

「遥斗、こっちに転校しちゃった友達とか、遊びに連れてってくれる親戚とかいるみたいだから、毎日見てるって訳じゃないし。出かけたあとは尚の家行くよ。」

眉を下げ、まるで窘めるように笑いかける。
その笑顔が、愛らしくて。

でも、全て彼女の思い通りにさせるのが、
なんだかちょっと悔しくて。

「先に充電させて。」

細い腕を引き寄せ、いつもより長めに抱きしめた。

あんまり寂しくさせないでよ、と少しの勇気と僅かな声を振り絞って呟いてみれば、らしくないこと言うんだね、と声色も変わらず返される。

確かに、今の自分はあまりにも自分らしくないかもしれない。

それもきっと、こんなにも愛おしい存在と出会ってしまったから。

自分が思っていたよりもずっと、俺は彼女がいない世界には耐えられないみたいだ。