Terminal ⅱ (ページ32)

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-Tokumaru Side-

いつも通りTO1の点検を終え、スタッフルームに戻る。
時刻はまもなく19時。

さすがに帰らなきゃな、と残っていた喜多見チーフや夏梅さん、ミンさんに声をかけて部屋を出ようとした瞬間。

「＿＿都庁危機管理対策室から伝達。」

異常事態を告げるアラームが鳴った。
現場は、横浜みなとみらい。
クルーズ船の爆発事故、、まさか、、、？

「待っ、、て、、くだ、、さい！！！」

循環器外科のオペを終え、猛ダッシュで飛び込んできた冬木先生と比奈先生。

「その船、、、音羽先生と、A先生が乗ってます。」

冬木先生の一言に一瞬で場の空気が凍りつく。

やっぱりそうだ。
先日の飲み会で非日常が欲しい、と零した彼女の為、俺と冬木先生と音羽先生の3人は毎日頭を捻って誕生日サプライズのアイデアを出し合っていた。

最終的には、ディナークルーズとかどうっすか、という俺の案が採用され、2人は今日幸せな誕生日を過ごしているはず、だったのに。

「急ぎましょう。」

緊迫した様子の喜多見チーフの言葉に全員が頷き、俺は勢いよくTO1を走らせた。

-Otowa Side-

ますます煙に覆われる船内。

「A、大丈夫か。」

「うん、、それより、、この患者さん熱傷が酷い。すぐに、、輸液しないと。」

咳き込みながら話す彼女を前に、今は何も出来ない自分たちに腹を立てる。

唇を噛み締めたその時、突然いつもの赤い救急バッグが目の前に差し出された。

「音羽先生。そっちはお願いします。」

「喜多見チーフ、、！？」

「A先生、音羽先生。酸素吸ってください。」

隣で弦巻先生が差し出す酸素ボンベを受け取り、目の前に座る彼女と頷きあった。

船内に残されていた重傷者の応急処置を終えると同時に、千住さん率いるレスキュー隊も応援用の救護ボートを連れて到着する。

彼らの助けを受けて黒煙を上げるクルーズ船から退避。
ようやく出発地の横浜港に降り立った瞬間、一歩前を歩く彼女がふらっとよろけた。

「A先生、！？大丈夫ですか？」

咄嗟に支える夏梅さんを前に、自分も手を差し出そうとするが、もう体が思うように動かない。

自分の名前を呼ぶ喜多見チーフの声が段々遠のき、やがて意識を手放した。