After story 09. ページ31
-Your Side-
爆発の要因はレストランの厨房。
すぐに溢れ出した煙の影響で、エンジンシステムにもトラブルが起こり、既に船は思うように操縦ができなくなっていた。
混乱する船内、飛び交う乗客たちの悲鳴の中、通報や救助要請の連絡は彼と乗務員に任せ、私は先に傷病者の手当にまわる。
「医師のAと言います。お名前言えますか？」
煙を吸い込み、意識が朦朧としている女性に声をかける。
動ける乗客はすでにデッキに避難しているものの、船内には重傷者が多数取り残されていた。
横浜港を進む船上じゃ、きっとMERだってすぐに救助に来られない。
しかも、もう19時をすぎている。
定時をすぎた今、要請があったところで彼らが出動できる状態とは限らないだろう。
とりあえずこの場は自分たちで凌がなくちゃ。
どうにか自分を奮い立たせ、十分な医療資材がない中、呼吸が苦しそうな女性にできる限りの手当を施す。
そんなとき、バッグの中のスマホが大きく音を鳴らした。
�� 東京都庁危機管理対策室 駒場室長 ��
ディスプレイに表示された名前に目を見開き、すぐに電話に出る。
「＿＿お疲れ様です。Aです。」
「＿＿A先生。駒場です。貴方は、今どこに。」
「＿＿横浜のクルーズ船です、先程爆発が起こって、、、」
「＿＿ああ、やっぱり。先程MERに出動要請をしたところ、冬木先生からその船に音羽統括官とA先生が乗っているかもしれない、との連絡を受けました。現在MERが現場に向かっています。現着まではあと5分です。」
「＿＿了解しました。音羽にも伝えておきます。」
「＿＿中の状況は？」
「＿＿動ける方は全員デッキに移動させました。船内には重傷者が残り6名。気道熱傷の患者さんがいますが、現場に医療資材が少なく挿管できません。避難時の転倒で頭を打ってショック状態の方も居ます。かなり危険な状態の方が多いです。」
「＿＿了解。到着次第すぐに中の応援に向かわせます。」
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作者名：mi | 作成日時：2023年6月25日 23時
