Terminal ⅱ (ページ27)

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学生時代、仲のいい友人だった裕介は「亡くした彼のことが忘れられないならそのままでもいい」と言って、私に告白してくれた。
付き合ってからも彼はいつでも私想いで、どんな時でも優しかった。
しかし、そんな優しい彼といつまでも過去に囚われて真っ直ぐに好きと言えない私が付き合っていてはいけない気がして、4年前に一方的に別れを告げた。

心から愛してくれる彼の時間を奪ってしまうのが申し訳なかった。

「ごめん、裕介。身体に負担かかるし今日はもう病室戻って。」

「俺さ、もうAに謝られたくないんだ。隣にいてくれるだけで十分幸せだよ。俺ならちゃんと前を向かせてあげられる、、、」

ガチャ、と音がしてスタッフルームの扉が開く。
入ってきたのは、1番この会話を聞いて欲しくなかった私の恋人、音羽尚だった。

-Otowa Side-

「隣にいてくれるだけでだけで十分幸せだよ。俺なら、、、」

スタッフルームの扉を開けた途端、まるでプロポーズのような言葉が耳に飛び込んだ。
その矛先は勿論彼女で。

「音羽先生、、、お疲れ様です。」

喜多見チーフがぎこちない声で挨拶をしてくる。
無言で会釈し、いつものソファーに向かおうとすると、車椅子に乗る彼が口を開いた。

「貴方も、MERのドクターですか？はじめまして。こちらの病院の救命科にお世話になりました、神田と申します。」

「MER統括官の音羽です。救命の患者が何故ここに。」

彼女に会いに来たことなど知らないふりをして言葉を返す。

「AA先生と学生時代にお付き合いをさせて頂いていました。こちらにいると聞いて、彼女にご挨拶に。いつもAがお世話になってます。」

冗談交じりに話す彼は、そう言ってにっこりと微笑んだ。