Terminal ⅱ (ページ24)

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After story 06. ページ24

-Iori Side-

次々と到着する傷病者の処置に追われ、気がついた頃には既に日は暮れていた。

「伊織先生。」

「お～お疲れ様。」

医局でカルテの整理をしていると、同じく少し疲れた表情の市ヶ谷さんが声をかけてきた。

「A先生は、？」

「ICUよ。今朝の急患の彼のとこ。」

「お知り合い、なんですよね？」

「うん、私とAの大学時代の友達。で、Aの元彼。」

「どんな方、なんですか？」

「うーん、凄く優しくて人懐っこくてAのこと超好きだったよ。」

遠い記憶の中の彼を思い出す。
もう大学を卒業して4年。
Aと彼が別れてからは、私も彼とはまったく連絡をとっていなかった。

「私もICU見てくる。」

戸惑った表情の彼女にそう告げ、私は医局を後にした。

-Otowa Side-

東京海浜病院での用件を終えた帰り道、厚労省に戻る前になんとなく彼女が兼任する救命の医局の前を通りかかる。

こっそり様子を伺っていると、看護師たちの話し声が耳に入ってきた。

「ね～きいた？？」

「なに？」

「ほらー、今朝の患者さん。高所転落の。あの人、A先生の元彼らしいよ～。」

「え！ほんとに！？どこ情報？」

「さっき赤羽先生が話してるの聞いちゃった～～イケメンだったよね～あの患者さん。」

「かっこよかったよね～これがきっかけに復縁とかあるかもよ？A先生しばらくは救命いるんでしょ？」

思いがけず聞こえた彼女の名前に足を止めたが、聞こえてきた話の内容は衝撃的なものだった。

彼女の元恋人がこの病院に？

看護師たちの話を元に、自分もICUへと向かった。

ガラス張りの病室。
いくつも並べられたベッドの右端。
彼の枕元で、彼女と赤羽先生が話し込む姿が見えた。

〝神田裕介〟

ベッドボードに貼られた彼の名前を確認する。
寂しそうな表情で話す2人を見て居られなくなり、音羽はその場をあとにした。