Terminal ⅱ (ページ19)

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タクシーはやがて綺麗なマンションの前に停車した。

眠たそうなA先生を連れてエレベーターに乗り込む。
人の彼女。いや、あの音羽先生の彼女をお姫様抱っこする訳にはいかないので、どうにか支えながら部屋の前までたどり着く。

チャイムを鳴らせば、ネクタイを外してオフモードになった音羽先生が顔を出す。

こういう時の第一声ってなんだっけ？すみません？？

「あ、えーっと、、、、」

口をパクパクさせているうちに、A先生が俺の腕をすり抜け、少し不機嫌そうな表情を浮かべた彼に抱きつく。

「尚ーーーっ！ただいまぁ！！！」

身動きが取れなくなった彼は、俺が手に持つ荷物を一瞥し、入ってくださいと部屋にあげてくれた。

扉が閉まれば、もうプライベートモード。
俺の姿には目もくれず、キスをせがむ彼女。

A先生もやっぱり甘えたいんだなぁ。より先に、音羽先生あれに耐えられるの凄いなぁ。という感情が押し寄せた。

「ねーーっ！尚！ちゅーは？？ねぇ！ちゅーしてよー！！」

さすがに可愛い。どこからどう見ても。

ついに諦めたのか、理性が失われたのか、彼は観念したように彼女に優しくキスを落とし、寝室へと運んだ。

目の前の光景に硬直していると、すぐに音羽先生がリビングに戻ってくる。

彼女の荷物を手渡し、俺は慌てて口を開いた。

「すみません、夜遅くに！A先生、欲しいもの聞いてみたんすけど。休み、非日常としか答えてくれませんでした。力になれずすみません、、。」

「いえ、、、こちらこそお見苦しいものをすみません。送ってくれてありがとうございました。気をつけて。」

いつもより少し優しい彼に見送られ、俺は2人の住処をあとにする。

いや見苦しくはないだろ、絶対。

あのふたりはどこからどう見ても美男美女。

映画のようなキスを交わす2人が、なんだかちょっとだけ羨ましくも感じた。