Epilogue ページ11
-Otowa Side-
カーテンを開けた窓から太陽の光が降り注ぐリビング。
ダイニングテーブルに向かい合って座り、2人で朝食を取る。
｢今日は？こっち顔出すんだっけ？｣
綺麗に身支度を整えた彼女がこちらに問いかける。
｢ああ、今日は視察の日だから。一旦厚労省に出勤してから、昼過ぎに行く。また報告書を書く羽目になるから、喜多見チーフに私物は片付けておくよう伝えておいて。｣
｢ふふ、伝えておくね。｣
何気ない会話。
でも、この朝の数分間がとても大切な時間だった。
きっと彼女とは、今まで生きてきた世界が違った。
決して交わらない運命だったのかもしれない。
いつでも誰かのために医師で居続ける彼女と、今は力を得るために正義に目を瞑る自分は、出会うべきではなかったのかもしれない。
でも、飛行機事故が起きたあの日から、2人の進む道は重なりはじめた。
もうお互いの運命から逃げることも、目を逸らすこともない。
どんな暗闇に飲み込まれても、掴みなおしたその手は離さない。
｢そろそろ行かなきゃ。｣
そう言って彼女が席を立つ。
｢はやいね。｣
｢うん、昨晩の事故で救命がパンクしてたから。今朝はMERに出勤する前に、ICUの様子見に行かなきゃ。｣
｢A。｣
｢うん？？？｣
首を傾けて微笑む彼女を引き寄せ何も言わずにキスをする。
｢気をつけて。｣
｢うん、約束。｣
そう言って差し出された小指に自分の小指を絡める。
｢行ってきます！｣
指が離れると同時に、彼女は玄関の扉を開く。
お互いの世界に、お互いが居られることの幸せを俺たちはもう知っている。
だから、
必ず再会を約束して
今日も愛おしい背中を送り出す。
Fin.
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作者名：mi | 作成日時：2023年6月25日 23時
