44.ニカの怒り ページ44
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「A、なんで俺に言わないんだよっ!」
目の前で、日本酒片手にでき上がっているのは
唯一私の同期入社のニカ。その日、半ば強制的に連れて来られたいつもの居酒屋で私たちは飲んでいた。
「だって誰にも言うなって言われていたし、ニカ、絶対に熱くなって編集長に食ってかかるもん。ニカにも迷惑かけたくないよ」
私が言うとニカは急に怒り出した。目が据わっている。
「この人事変だよ!絶対に佐伯さんが編集長に裏工作したに違いない!」
裏工作って……でもそう思うよね。
けれど、理不尽な方法で担当を変えられたからといって、実際に勝手に動いたのは私だし、反省すべきところがないわけではなかった。
「A、いいのかよっ、お前は編集の仕事がしたいんだろ?それに、二年くらいは戻って来られないって話じゃん」
「嫌だけど、もう決まっちゃったんだから仕方がないよ」
ニカは日本酒をぐびっと煽った。
「ちょっと、ニカ!飲みすぎだよっ!」
「今日はいいのっ!飲みたい気分なんだよっ!Aも飲めよっ!すみませーん!冷酒もう一本お願いしまーす!」
分かってる。
私の事を心配してくれているんだよね。
私だって藤ヶ谷さんやニカと一緒に働きたい。中原書房の仲間は、味があって面白くてみんな
良い人ばかりだった。
「くっそー!あの女っ!」
「ニカっ、言い方っ」
「あいつのこと、北山さんに全部ぶちまけようよ!汚いやり方で担当を変えたことや、今度のことも!」
「そんなことするのはやめようよ。北山さん、自分のせいで私が出向になったって思っちゃうよ……」
不満そうなニカを、どうにか宥めた。
結局その日はニカと三軒はしごした。
二軒目に入ったお店では偶然中村ちゃんたち派遣さんが飲んでいて、皆で合流して三軒目に流れた。
「私っ、桐谷さんがいないなんて寂しいですっ!優実ちゃんも辞めちゃったし、私も考えちゃいます」
「そんなっ、中村ちゃんムードメーカーなんだから。それに、社員みんな凄く助かってるの。中村ちゃんがいないと藤ヶ谷さんも困っちゃうよ?」
「桐谷さーーーんっ」
私がそう言うと、中村ちゃんは私に抱き着き大声で泣き出した。もしかしてお酒飲むと泣くタイプ?
「中村ちゃんっマスカラがー!黒い涙流れてるって!」
刻々と、悲しいような、楽しいような夜は更けていった。
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このみ - 俺達の秘密 (2020年10月2日 8時) (レス) id: 25b3f023e7 (このIDを非表示/違反報告)
このみ - 新婚生活 (2020年10月2日 8時) (レス) id: 25b3f023e7 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - sioriさん» sioriさん、ありがとうございます。ずっと心待ちにしていたので嬉しい限りです。早速読ませて頂きます。 (2020年6月16日 23時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさーん、お待たせしました!3章のパスを外しました。また近々4章も外しますね! (2020年6月16日 22時) (レス) id: 1f18be18ea (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 早速読ませて頂きました。佐伯さんの本性が出てきてこの後の展開が益々楽しみです。先にピンクのお話を読ませて貰ってるので、どう繋がってくのかとっても楽しみです。3章楽しみにしています。 (2020年6月5日 3時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:siori | 作成日時:2016年6月20日 16時