【おそ松さん】長男というもの (ページ13)

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一松side

｢なぁ、わからないか？兄さんの場所｣

いつも可愛がっている猫に兄さんの上着の匂いを嗅がせ聞く。

猫はフイッと顔を背けて上着の匂いを嗅いでくれない。

｢くそっ、なんだよ｣

｢くそっ、っ｣

心細くて、不安で、どうにかなりそうだ。

｢ねぇ｣

猫に手を伸ばすが猫はスラリのかわし、いつもなら猫なで声で頬をスリスリしてくるはずが今日は俺のことを睨み距離を置く。

猫はわかっているのかもしれない。
俺がクズだってことを。
この兄弟でも一番のクズ。

｢お前は頭が良いな｣

そうだ、頭が良いんだ。

だから俺もあの時一番頭がいい行動をとろうとした。

それは、クズで、ゲスくて、最悪な人間がすること。

A兄さんはあんなにいい奴なのに俺は……

俺は、A兄さんに酷い対応をとり始める兄弟たちとは別に違うことをしていた。

酷い対応はしない。でも、目を合わせなかった。
喋らなかった。

『酷い対応をとる』、『酷いことを言う』、それが一番悪く、一番A兄さんに嫌われる。そう思っていた。

だから、『しゃべらない』それをとった。

そしたら、A兄さん以外の兄弟を裏切ったことにもならないしA兄さんにも嫌われることは無い。

でもそれは一番兄さんを傷つかせた。

｢俺のこと、許してっくれる、かな｣

涙が流れた。こんな状態でも俺は兄さんに許しを問う。

ほらね、クズだ。生きる価値のない、ゴミ。

俺の足に猫が寄り付く。

｢なんだよ、今更｣

さっきは散々無視したくせに。

俺も、同じだ。

散々無視したくせに、いざ兄さんが居なくなったらこうやって泣いて許しを問う。

｢ばっかみたい｣

だけど、

｢俺にはA兄さんがいないと｣

こんなクズな俺にはA兄さんがいないと
生きていけないよ。

こんな俺を初めて認めてくれたA兄さんがいないと。

腕の中にいた猫を下ろし、目を背けていた前を向く。

兄さんの居場所、今ならわかる気がするんだ。

｢きっと、あそこにっ……！｣

【実感し、決意する】