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馨side
馨「A…起きてる?」
静かに眠る彼女のそばにゆっくりと近づく。
馨「ねぇ…早く起きてよ…聞きたいこと、たくさんあるんだ」
…それと、言いたいことも。
一人で喋っている状況になんだがとても虚しくなり、部屋を見てまわる。
本当に必要最低限なもの以外は置いてないんだな。
周りの白い壁と天井を見てると気がおかしくなりそうだ。
病み上がりもあってか少しフラついてしまい、近くの棚に手を置く。
すると、カタッと何かが落ちた音がして慌てて床に目を落とす。
馨「これは…A?」
そこには写真立てがあり、映っているのはおそらく小さい頃のハニー先輩とモリ先輩、そしてAだろう。
写真の中の3人はとても笑顔が眩しくて可愛い子供たちだった。
けどAはこのベッドの上に横たわっていて、顔も今より青白く、腕も細い。
今とは…違うAだ。
それでも写真の中のAはこんなにも幸せそうな笑顔を見せていた。
写真立てを元の位置に戻し、ベッドの近くに座る。
静かに寝てる彼女は写真の頃よりも健康的だ。
優しく彼女の頬をなでる。
うん。やわらかい…な。
『―みつにぃ、もりにぃ…………』
小さく声が聞こえてAの目を見るもまだ眠っており、それは寝言のようだった。
…やっぱり僕は何も知らない。
小さい頃のAも、苦しさも、モリ先輩との関係も。
何も僕は知らないんだ。
馨「…Aのこと、僕にも教えてよ。
……………好きなんだ……Aのことが…」
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作者名:Lion | 作成日時:2024年2月23日 0時