枯れない星 ―宮 侑― ページ1
佐藤 Aside
「まーた進路調査だってさ、二年の一学期じゃまだ考えられないってー。」
「うーん、そうだね。」
渋った返事を返すと、美咲はムッとした表情でこちらを見た。
「何さー、Aはもうとっくに決めてる癖にー。気楽じゃないけど気楽そうでいいよね。」
「はは、どっちなのそれ。」
美咲の言う通り、私はもう行きたい大学も成りたい職業も決めている。小さい頃から夢だった保育士に成るために。高校だって夢を叶えるために選んだ。稲荷崎は少しレベルが高かったけど、必死に勉強して、やっとの思いで入った。大学はもっと難しいらしいけど、部活にも入らず毎日勉強をしていたら、先生もこのまま続ければ合格は余裕だって言ってくれた。一年の頃だから、夢を諦めて欲しくなかったからかもしれないけど…
「おーーーい!早く部活いくよー!」
教室の入り口で誰かが叫んだと思うと、美咲はふっと振り返って、
「今いくーーー!」
同じくらいの声量で返事をした。
どうやら、美咲の友達らしい。よくみると、何度か見たことのある子だと気づいた。陸上部らしい綺麗な褐色肌だ。
美咲はそそくさと鞄を閉めて肩に担いだ。
「A、じゃあもう部活行くわ!また明日!」
そう笑って、美咲はバッと走り出した。
教室の入り口で待っていた子は、逃げるようにしてすぐに駆け出した。
「頑張ってねー!」
聞こえているかは分からないが、とりあえず私はいつものように叫んだ。
遠くに、二つの足音が聞こえる。
そして廊下を走るな、という怒号も聞こえてきた。
思わず私はふふっと笑ってしまいそうになるのを堪えた。
さ、私も帰ろう。
何気なく下を向いた。
その時気づいた。
ん、
あれ?
………無い。
胸ポケットに入れたはずのクシが無い。
あれ?あれ?と机やロッカーに手を突っ込んでも、もう何も入っていなかった。
「あ!そういえば…」
昼休み校舎裏で美咲とじゃれてた時どっかに飛んでそのままにしたんだっけ…
あれ妹のなんだよね…もって帰って来なかったら、激怒するだろうな…
私が誕生日にあげた物だけど、気づけて良かった。
とりあえず探しに行こう。
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作者名:梯子 | 作成日時:2018年8月12日 16時