6月･玖【幸村】 ページ12
幸村視点
春の高体連も終わり、次に近づくのは文化祭。教室で文化祭1か月前の決めごとや注意などを聞きながら1年の体育を横目で見る。
「(今日は徒競走か…Aがバテて居なければいいが…武田先生ならば的確な判断をしてくれるだろう)」
もうすっかり癖となってしまったAの体育を見る私に、席の近い左近殿が声をかけてくれる。
「幸村さん、ほら出し物決まっちゃいましたよ」
「！すまない、左近殿。今年は…たこ焼き屋と射的屋か…」
黒板には小十郎殿の綺麗な字でたこ焼き屋、射的屋と書かれており三成殿と高虎殿が店員やらを決めていた。
「通年のお化け屋敷の案も出たようだが、すぐに三成が却下したんだ」
「あー、それは多分…」
兼続殿が耳打ちをしてくるが、却下した理由はわかってしまう。私たちの学年のお化け屋敷はこれまでで1番怖いと言われ、それで泣くAを見たくないからと三成殿が却下したのだろう。
「ククッ、今年はAの悲鳴が聞けると思ったんだがな…」
「お前のその考えのせいだ」
去年、特に活躍していた小太郎殿と半蔵殿が後ろで話していたのが聞こえるが、三成殿の声で一斉に教壇の方を見る。
「では、それぞれの振り分けだが…たこ焼き屋には私と幸村、兼続、左近、半蔵、元就先生が。残りの会長、吉継、高虎、小十郎、小太郎に射的屋を任せる。呉々も問題のないように！」
その一言で話し合いは終わり、自由時間となる。が、すぐに私の机の周りには兼続殿、三成殿たちが集まりたこ焼き屋についての話し合いが始まる。
「まず、場所だが…中庭の入口側へ申請を出しておいた。食堂にも近く、食べる場所なども近いからな」
「ま、それが1番でしょうね。半蔵さんも新聞部の活動であっちこっち行くなら、中心である中庭を拠点とした方が動きやすいでしょうし」
三成殿の素早い判断と左近殿の考えに頷き、値段や個数、シフトなどを決めていく。
「当日、Aとは誰がいるんだ？」
「それは勿論、わた…んっー！」
「こちらで決めますので、ご心配なさらず」
淡々と話を進めていると、半蔵殿がポツリと言ったA問題に反応し、兼続殿が口を開いた瞬間に口を塞ぎ話をやんわりと止める。
Aの文化祭問題については既に家族内で話し合いが開かれており、何度も議論しているが…結局、シフトが決まってからとなりAの名にはいつもより敏感なのだ。
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