17 ページ18
side:you
真っ暗な視界の中。
ひとつ、またひとつと、
入眠時心像を追うかのように首筋や背中を擽る熱。
擽ったさに身を捩ると、悪戯な笑い声が微かに鼓膜を撫でる。
ジェシー「ドキドキ、してきたでしょ？」
奪われた視覚を補うように過敏になった耳元で低く囁かれると、思わず吐息が漏れる。
私、こんなに簡単な女だったっけ。
元々はもっと、賢明で、つまらない女だったはずなのに。
ここの、場所のせいなのか。
それとも、鼻腔を貫く彼の麝香のせいなのか。
いくら冷静を貫こうともがけど、もがくほど意識は深いところへと絡めとられていくようで。
A「ジェシー…？離れ、ないの？」
ジェシー「んー？離れて欲しいの？」
A「っ…」
意地悪な声色で、私の中の本能をこじ開けられる音がした。
痛い。
痛いほどに、切ない。
理性や文明を忘れた身体に、これ程まで彼の匂いが効くとは想定外だった。
耐えられないほどの焦燥に、思わず決定的な事を口走っていた。
樹「ん…っ、だめだよ、まだ。ジェシーなんかに乱されちゃ」
A「っ…！？」
樹に、そのだらしなく開いた唇を塞がれてなければ。
樹「ジェシーも、まだダメ。」
ジェシー「ちっ、抜け駆けしてやろうと思ったのに」
A「じゅ、樹…今…」
樹「君も、今はまだこれで我慢してね」
突然開けた視界に入ってきた、なんとも言い難い彼の苦笑いに、思わず腰が抜けた。
ジェシー「hu〜。そんなに樹のがよかったの笑」
樹「からかうな、ジェシー」
呆然とする私に、2人は手を振って夕焼けの中帰路に着いた。
…なんだったのだろうか。
ジェシーから僅かに感じた焦りも、
樹の触れた唇が微かに震えていた事も。
全部全部、私だけが真実を知らないようで。
A「…私、何してたんだろ」
誰もいない洞穴に吹き荒ぶ風は、
私を嘲笑っているようだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 351人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
無愛想店員。(プロフ) - ayu121713さん» コメントありがとうございます。有難いお言葉を頂けてとても嬉しいです。これからは定期的に更新しますので、どうかお付き合い頂けますようお願いします。 (2020年2月24日 1時) (
レス) id: 2ac334e3af (このIDを非表示/違反報告)
ayu121713(プロフ) - この小説が大好きで何回も読み返してます！続きがすごく読みたいです(T_T) (2020年2月23日 0時) (レス) id: 04f206d509 (このIDを非表示/違反報告)
無愛想店員。(プロフ) - mihoさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けてとても光栄です。これからも楽しく読んで頂けるよう尽力致します。 (2020年1月7日 19時) (レス) id: 7206783c4e (このIDを非表示/違反報告)
miho(プロフ) - コメント失礼します！この作品にはすごく大好きです！更新頑張ってくださいね！応援しています！ (2020年1月7日 18時) (レス) id: ab8effb0a8 (このIDを非表示/違反報告)
無愛想店員。 - ひめくんさん» ありがとうございます。コメントを頂けると大変励みになります。これからも楽しく読んで頂いたら幸いです。 (2019年6月9日 17時) (レス) id: 8aa59ae23f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：無愛想店員。 | 作成日時：2019年5月27日 22時
