夜もすがら 【仰げば尊し】

１２話 ページ15

＿＿＿＿＿＿

屋上へと足を進めると 叫び声が聞こえた。

急いでドアを開けた瞬間 裕人が真正面にいた。

「！？」


樋熊「どうしたんだ！」



裕人の後ろには安保たち。

頬に 殴られた痕がある。

これは……



木藤良「…先生のせいですよ」


樋熊「え？」


木藤良「先生のせいで 俺達は壊れた」



その言葉の意味を理解するよりはやく、

裕人が屋上を出ていく。


「あ…まって、裕人！」


このままほっとくのはなんかいやで

気づいたら呼び止めていた。


屋上の階段を下りた裕人が、私を見上げる



「……大丈夫、とは聞かないけど…
私のせいだから。」


裕人は 顔をしかめた。


きっとさっきの蓮くんの言葉は、

安保が吹奏楽部に入りたいと言ったからで

それで喧嘩をしたんだろう。


でも ちゃんと裕人たちに伝えたいことを言えと
いったのは他でもない私だから

蓮くんは 樋熊先生のせいだといったけど、
ちがう。



青島「お前は関係ねぇよ」


「…あるよ」


そう言うと、裕人は何も言わず歩き出す。


「あ、ちょっと！！」


私は急いで階段を下り、すかさず裕人の手を掴む。

裕人はすこし嫌そうな顔をした。


「まってよ、話終わってない！！」


青島「安保 吹奏楽部入るんだってよ。
高杢と桑田も」


「……しってる」


青島「あいつら、どうせ 入っても ほかの奴らと仲良くできねぇだろうからよ、
……ちゃんと面倒みてやれよ」


「………！」


何言ってんの


そんなこと＿＿＿＿＿＿



「裕人も！吹奏楽部入ったらいいじゃん！
私やだよ？面倒みてやれなんて…
ねぇ……だから＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

んっ！？」


.




.



頭がフリーズした

後頭部に回された手と 唇にある柔らかい感触。



＿＿＿＿＿＿裕人にキス、されてる。



好きな人にキスされるなんて、そんな嬉しいことはない。でも……




青島「やっと静かになった」



.


ﾊﾟｼﾝｯ



私の口を塞ぐためだけの行為で 意味の無いキスだとわかると虚しいとか、悲しいとかじゃなくて


怒りの気持ちが湧いてきて



「さいってい……！」



裕人の白い頬を叩くと 私は逃げるように走った。

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