複雑怪奇なゲームの攻略法*1 ページ1
この思いに気づいたのはつい最近のことで。
特別な事があったから、とかそういう事でもない。
ただカントクさんを見る度に
淡い痛い想いに貫かれるようになった。
目まぐるしく変わる画面を見ていても
ちょっとだけかわいい同僚に話しかけられても
何ら変わらなかった俺の見えている世界に
少しずつ、でも確実に暖かな色を塗っていく。
でも、彼女が俺に向ける笑顔は俺だけのものじゃなくて。
他の誰かにも当たり前に振り撒いてる。
この、甘くて苦しい想いになんと名前をつけようか。
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「カントクさん、おつ〜」
大量の洗濯物に埋もれながら、それを運ぶ
その華奢な背中に声をかける。
「至さん、どうしたんですか?」
くるりと振り返って大きな瞳で俺のことを見つめる。
「洗濯、干すの手伝おっか?」
「えっ…?」
あからさまに目をぱちぱちさせて、また俺を凝視する。
「至さんがそんなこと言うの、珍しいですね…
何かいいことでもありました?」
疑い深く、ちょっとからかい気味にそう尋ねる。
「うーん、まぁ、
今カントクさんに会えたことがいい事かなぁ…?」
きょとんとした顔でまた俺を見つめる。
「それ、会社の女の子にも言ってるんですか?(笑)」
軽やかに答えるその口調はただ真っ直ぐに
俺の心を柔く傷つける。
ほらね、やっぱり
他の子と違って、
攻略するには難易度高め、無理ゲー感ある。
「でも、手伝ってもらえるならお願いします」
「おけおけ、とりあえずそれ半分持つよ。」
「ありがとうございます」
また、ふわりと笑った表情に釘付けになる。
この複雑怪奇な感情を患わせたのは
間違いなくカントクさんで。
このまま選択ルート間違え続けたら
バッドエンドまっしぐらの難解なギャルゲー。
小さく溜息をつきながら高い空を仰ぐ。
何でこんな難しいルートを選んだんだろう。
鼻歌を歌いながら
るんるんと洗濯を干すカントクさんは
相も変わらずに、眩しかった。
……To be continued
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作者名:なつみかん。 | 作成日時:2017年9月6日 19時