【wrwrd!】パパと皆【tn】 (ページ20)

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その様子を、2人は固唾を呑んで見守っていた

ちらりとAに目を向ければ、珍しいからか、食い入るようにぬいぐるみが持ち上がっていく姿を見つめている

視線を戻せば、ぬいぐるみはアームに腕を取られ、その体をゆるゆると起こしていた

しかし、その足が宙に浮くことは無く、とうとうアームはぬいぐるみの腕を離した

「あーー！！！」

ぬいぐるみが完全にアームを離れ腕を下ろしたところを見て、Aは声を上げた
久しぶりということもあり、試しということもあったのだが、それが伝わるはずもなく、落ち込むAから目線を外し、ゾムは追加の金を入れた

再び動き出すアームは、再びぬいぐるみの上で停止した
そして、またもアームを降ろしていけば、ぬいぐるみを掴みきれないものの、その体を少しだけ傾けた

ころころと、転がしていく

時間はかかるものの、職業柄金は沢山ある
Aへの初めてのプレゼントにと、ゾムは張り切ってアームを動かした

そうして、しばらくの時間をUFOキャッチャーに費やし、ついにその時はやってきた

半身が穴の上に浮いた状態のぬいぐるみを見て、ゾムは口角を上げる

もはやこうなれば勝ち確である
見守るAにちらりと視線を向けたあと、ゾムはアームを動かした

情けないアームでも、下へと押す力は十二分にある
穴に浮く半身を押して傾けられれば、重力に従い、やがてぬいぐるみは受け取り口へと落ちる

「やったー！！！」

両手を上げて喜ぶAに、ゾムは安堵の息をついた
そして、受け取り口へと手を伸ばし豚のぬいぐるみを取り出すと、ゾムはAと目を合わせるためにしゃがみこんでぬいぐるみを手渡した

「大切にするんやで」

両手でぎゅっとぬいぐるみを抱えるAに言うと、Aは首を縦に振った

「ありがとう。ゾムお兄ちゃん」

微笑み、さらに力強くぬいぐるみを抱きしめるAの姿を見て、ゾムは軽く頭を撫でると再び城へと歩みを進めた

Aが持つにしては少しばかりサイズが大きな豚のぬいぐるみを抱え、駆け足でゾムの後ろを歩く小鳥のような彼女に、ゾムは微かな幸せを噛み締めた