136話 ページ36
貴方「……紡ねぇって好きな人いる?」
紡「ふぇ!?」
いきなり聞かれたことに私は驚いた。
唐突すぎない?聞くことが……
貴方「恋人のことで……といっても私もいないけど……好きだったって言われてその人を泣かせちゃって、多分苦しめたと思うんだ」
恋人がいなくてもAちゃんのことを好きでいてくれる人がいた。
っていうことだよね。
よくあるようなすごい展開だな……
かといっても、私には恋人とかそういう経験をしたことないからな。
彼女は黙ってオーディションの結果を黙々とまとめ続けている。
その表情はとても中学生とはいえない……
大人びているというよりも、大人にしか見えない。
それはきっと彼女が自然と身に付けてしまったもの。
紡「(かといって、なんていったら彼女の満足する答えになるかな?)」
きっと、よくあるような言葉では、大人の彼女には届かないだろう……
紡「私は恋愛経験がないからなんとも言えないけど、きっとAちゃんは悪くないよ?それに、その好きだって言ってくれた男の子もね」
こんなよくある言葉しか出せない。
いや、むしろよくある言葉の方がいいのかもしれない。
大人びているこの子にとっては普通の言葉の方が届くのかもしれない。
貴方「紡、ねぇ……ずっと、ずっと、考えてた、私がいけない、のかな、って、苦しい、のは、彼の、ほうだったんじゃ、って……」
涙をながし続ける彼女の背中をさすった。
大人びているのではなく、甘えかたを知らないだけの我慢強い子供、そんな感じだ。
紡「大丈夫だから、どっちも悪くないし、私はずっとAちゃんの味方だよ」
貴方「紡ねぇ……」
彼女はそのままずっと泣き続けていた。
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