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のんちゃんってなんで私をそんなに好きでいてくれているんだろうか。
こんな無愛想な女なのに。
いつからだろうなんてベッドに閉じこもってふと考えてみる。
昔の印象は、真面目で優しい気遣いのできる人って感じだったけど、
そういえばよくよく考えてみると、
昔のこんなことがきっかけだった。
『………っ、、まだかなー、、、』
それは、高校三年生の冬の季節だった。
のんちゃんからは夕方6時くらいに帰ると連絡が来ていて、帰ってきたらご飯にしよってしげと話していた時。
しげは、今大学受験に没頭していて中々部屋から出てこないし、のんちゃんは仕事が忙しく話し相手も折らず、
この時期はとくに一人でいることの方が多かった。
けど、昔から1人は慣れていたので苦痛ではなかったのだ。
その日は丁度暇だったのでしげに迷惑がかからない程度の音量でテレビ映画を1人まったり見ていた。
結構、映画を見るのは昔からの趣味で、
よくしげと2人で見たりなんかもした。
しげは、「全然音量あげてええで」なんて言うけど、
そのせいで勉強に支障が出てしまっても嫌だしなんか思われるのも嫌なので一応音量は静かめにしている。
映画もクライマックスを迎えると言うところで突然、
玄関の音がガチャッと静かに開いた。
外は雨だったので、私は一応小さめのタオルを用意しておいたのだが、
『……あっ!、、、』
『小瀧くんおかえっ、』
玄関まで迎えに行くと底には、
暗い顔をして俯いたままのびしょ濡れなのんちゃんがいた。
『……えっ、、、、、、か、傘は?!!』
今日の朝、絶対に傘を持って学校に行ったはずなのに
何故かのんちゃんは濡れていて。
『……ど、どうしたの、、そんな濡れて、、、』
不意にもびしょ濡れなのんちゃんはかっこいいと思ってしまった。
髪の毛をいい感じに目にかかってて。
でも今はそんなことも考えてる暇はなく。
『……い、今、、タオル持ってくるから、、
ちょっと待っ、』
慌てる私とは裏腹に、のんちゃんは私に近づきぐったりともたれかかった。
『ひぃ!!!、、、、、つめたい、、、、』
のんちゃんの身体はびっくりするほど冷たく、小刻みに震えていた。
しかも、もたれかかる瞬間に見えた瞳は、捨てられた子犬みたいにうるうるしていた。
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作者名:また。 | 作成日時:2021年8月9日 16時