忘 ページ5
『すみません、これお願いできますか？』
「はい？えーっと…ご家族の方でしょうか？まずはどなたの…」
「あ、この方は良いのよ。ごめんなさいね、この子新人だから櫻庭さんのことまだ知らなくて」
『あ、そうだったんですね、こちらこそすみません…これ、今週の着替えといつもお世話になってる皆さんに少ないんですけどお茶菓子を…』
「まぁ、ありがとうございます！ちゃんと渡しておきますからね」
『ありがとうございます。それじゃあこの辺で…』
「あの方は…？綺麗な方でしたけど」
「櫻庭さんの娘さん。……彼女が来ると櫻庭さん暴れるから、受付で全部対応してる。覚えておいてね」
「あ、暴れる？？」
体を壊した母に週一で会いに行って顔も見ずにお金と着替えだけ渡しに行く
『おはようございます』
「あ、おはようございます、この前と同じように着替えたら今日も洗い場でお願いします！！」
『はい』
昼間は適当に自分でも出来そうな仕事を選んで短時間で入って……夜は
「店長、正式にあの人誘いましょうよ〜！キレイだし洗い場早いし！」
「この前軽く勧誘してみたんだけどそこまでまとまった時間は取れないらしくて。…ちょっと怪しいっちゃ怪しいんだよなあ、28歳でねぇ……」
周りからどう思われてるなんて気にしない
「わ、あの子可愛い」
「ガチだ。でもなんか夜系っぽくね？w」
「確かにガールズバーとかいそ〜w」
必死に生きて何が悪いの
私の人生他人からどうこう言われる筋合いは無い
ﾌﾞｰｯﾌﾞｰｯ『……ドタキャン』
《サクラごめん、急用入って行けなくなった》
「ねぇ、今日どこ行くの？」
「絶対お前が喜んでくれるとこ！！」
『……』
…ダメだ。最近おかしい
これも全部、
「Aちゃん、よな？」
『！…っ人違いです』
「俺が見間違えるわけないやろ。…俺の事、忘れてしもたん？」
忘れるわけない
この前も、今も……どうしてあなたがそんな顔をするのよ
泣きたいのは私の方なのに
「お願い、ちょっとだけ時間くれん？」
私を捨てたのはあなたでしょ……………康二
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作者名：しらぬい | 作成日時：2023年8月1日 11時
