50通の恋文【萩原研二】

恋文6 ページ9

『萩原くんへ。LHR、席替えするみたいだね。私は萩原くんが隣だと手紙読んでるところガン見されそうで怖いです。だから嫌ってわけじゃないけどね！！もしなれたらよろしくね』

シンプルな水色の封筒の中に手紙を入れる。
昨日悩んで買った便せんと封筒。女の子っぽいのだと誰かに冷やかされたりしないかな……と不安になってシンプルなのにしてみたけどよかったのかな……？
買う前にも不安になり、買ったあとにも不安になる。男の子と文通したことないからよく分かんないんだよね……。

「買ったものは仕方ないか……」

よし！と立ち上がる。昼休みだから弁当仲間がゾロゾロと弁当を持って集まっている。お弁当を食べる集合場所、私の席だもんね！

「先食べてて」

「うい〜。いってら〜」

ヒラヒラ手を振る友達。少しワクワクニヤニヤしているのは無視する。何を期待しているんだ。

「萩原くん」

松田くんと二人でお弁当を食べようとしている萩原くんに声をかける。

「お。お返事〜？待ってた」

嬉しそうに笑う萩原くん。はいと手紙を渡す。

「封筒だ……」

「どんなのがいいか分かんなくてシンプルなのだけど許してね」

「Aちゃんが選んでくれただけで充分文句ないんだけど」

「萩原……ちょっと怖いぞ、お前……」

グワっと萩原くんが松田くんの方をむく。すごい勢いだったからビクッと松田くんの肩が跳ねる。

「松田には分かんないだろうな！この嬉しさ！」

そりゃ……悪かった……、と少し引き気味に言う松田くん。ちょっと可哀想かも……。

「じゃあ、私戻るから」

「ん。ありがと」

ニコリと笑って手を振ってくれる萩原くん。とても嬉しそうだし、そんなに喜んでくれるとは思わなかった……。
ちょっと悩んで買ってよかった。
ここで笑いながら戻ったら冷やかされるから笑いをかみ締めて友達の所へ戻ったのだった。

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