ねえ、励ましてよ！【特撮短編集】

◊フィリップ ページ15

「A、君は頑張り過ぎじゃないかな。」


私が持っていたペンを取り上げると、フィリップは少し眉を下げた。


「ううん、でも頑張らないと。」


ここさえ乗り越えれば、と意気込みペンを取り返そうとしたが、その手はさらりとかわされ行き場をなくした。


「だめだ。休んでもらわなくちゃ僕が困る。」


僕が、なんて言われてしまったら休まないわけにはいかない。

……お前ってフィリップのことになるとポンコツだよな。
自称ハードボイルドさんに言われた言葉が脳裏にちらついたが、それをもみ消すかのように


「……そっか。じゃあさ、私のこと癒やしてよ。」


と持ちかけてみた。

すると案外素直に受け入れてくれたのか、頬に優しい手が触れた。


「いつもお疲れ様。……ご褒美。」


唇どうしがくっつくと、すぐに離れた。

それがなんだか寂しくて、もう一回、またもう一回。

キスの嵐が収まったころには彼の顔は真っ赤だった。


「もう、欲張りだね……」


「まあ、それで君が頑張れるならいいけど。」


その言葉が嬉しくて、自分だけのものにして大切に保管しておきたくなった。

ただ私は聞いていないふりをして、また口づけを交わした。

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