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「ねね、十万貸してくれない?」

「……はぁ?」



妙に薄っぺらい笑みを浮かべながら訪ねてくる男、太宰治に怪訝そうな顔をする彼女。

煙を漂わせていた煙草の吸殻を踏みつけて、彼を揶揄うように口を開いた。



「幹部殿なら、金なんぞ私のような安月給より唸る程持っているでしょう。真逆金欠だなんて云わせませんよ」

「其の真逆だよ」

「阿呆か」

「一寸使いすぎちゃってさぁ」



ごめんちゃい、と手の前でハートを作る彼を無視してゴソゴソと鞄の中を漁り、革製の財布を取り出す。



「急に云われても、十万なんか今持ってる訳…………あったわ」

「さっすが。安心して、ちゃんと返すから、ね?」

「信憑性ないんだけど」



まぁ、そんな大した額じゃないし。ちゃんと返してくれるか。

そう思って彼の手に10枚の一万円札を手渡す。



「……そうだ、利息つけよう!」

「え」



そう云った瞬間顔を歪める太宰にニヤニヤと顔を綻ばせる。



「んーそうだな。返せなかったら全財産を私に渡すとか」

「…………うふふ、良いよ」



何か嫌なことを企んでいるような笑みを浮かべる彼を不思議に思いながら、彼女は財布を鞄へとしまった。



「ヤベ、仕事遅れる。太宰も早く帰んなよ、部下が困るでしょ」

「はいはーい」



側においてある遠距離狙撃銃(スナイパーライフル)を肩に掛け、足を踏み出そうとした瞬間声を掛けられた。



「…………死なないでね」



太宰が発した其の言葉に驚愕して、彼女は思わず空耳かと自分の耳を疑った。



「どしたん?珍しいね、太宰がそんな事云うなんて」



あー、と頬を掻いて苦笑いをする。

数秒考えた後、太宰は少し俯向いて後ろへ背を向けた。



「否、何でもないよ」



只一寸、心配になっただけなんだ。




彼女はそんな彼を不思議に思いながら、前を向いて歩き出した。

たった十万円が、この先の人生を狂わせるとは知らずに─────



最後の愛人【太宰治】→←とりま十万返せ【文スト】



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おとひび(プロフ) - A2A2さん» ありがとうございます!!楽しみにしています! (3月26日 16時) (レス) id: c954a091c2 (このIDを非表示/違反報告)
A2A2(プロフ) - おとひびさん» 私も貴方様のコメントを見てわっはっはって感じてす!!!!ありがとうございます!!その作品は私も気に入っているので、ぜひぜひ書き進めさせて頂きます! (3月26日 13時) (レス) id: fe3da03f44 (このIDを非表示/違反報告)
おとひび(プロフ) - ちょっと待ってください文章の書き方も表現の仕方もネタの思いつきも神ってますよぉ!?!?数話だけでも物凄く面白くてわっはっはって感じです!(?          よければ「ハンムラビの誓文【文スト】」の続きを書いてほしいです…! (3月25日 23時) (レス) id: c954a091c2 (このIDを非表示/違反報告)
ルウ(プロフ) - サラミザラさん» 本当ですか‼ ありがとうございます! (2月20日 18時) (レス) id: e1051b8db4 (このIDを非表示/違反報告)
サラミザラ(プロフ) - ルウさん» わー!!有難うございます_(._.)_。暇があるときに優先的に下書きを書き進めさせていただきます……!! (2月20日 18時) (レス) @page9 id: 1a675fd086 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サラミザラ | 作成日時:2024年2月18日 12時

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