5、デジャヴな快晴の日に ページ7
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翌日、雲一つない晴天。
昨日と同時刻に再びあの橋梁に訪れる。
本来の私ならとっくに入水を始めているだろう。
だがしかし、今回の優先順位はこの河川ではなく、例の修道女だ。
川の方へ向かずに、橋梁の道を見渡せる形で橋の手すりに寄りかかって彼女を待つ。
早く来ないものかと、若き青年の心を躍らせながら。
「…遅いなぁ」
彼女を待ち始めてから30分程度経っただろうか。見える景色は変わらないままである。
ぼーっと空を眺めてみてもただ果てしない青が広がり、何もない空虚な時間を更に退屈させた。
そりゃそうだ。時間も決めていなかったし、彼女の親、もしくは孤児院の院長が外出を規制しているのかもしれない。
修道院に住まう修道女というものは、安易に外出することを許されないとも聞いたことがある。
来れないということも存分にあり得るだろう。
冷静に考え始めたからか、退屈していた気持ちが徐々に自分の死を勧め始めた。
「はぁ…。もういいや、さっさと死んでしまおう」
そうとは言いつつ毎回死ねていないが。
昨日と同じように、橋梁の手すり部分に座って河川の方に足を浮かせた。
陽の光が澄んだ川の水に反射して美しく輝いている光景に、今日はなんだか高揚しない。
心にぽっかりと穴が空いて忽然とし、私がこの世から消えればこの虚しさも消えるのではないかと期待した。
しかし、どうにもそうとは思えない自分もいる。
嗚呼、私は余程彼女に会いたいのだろう。
だがこの気持ちも死んでしまえばなかったことに…______。
そう思って、腰を浮かせて体を前進させようとした。
「だめーーっ!!はやまらないでーーっ!!」
「のわっ?!」
二番煎じとはこのことだ。
あまりにも昨日と同じシチュエーションで、同じリアクションをした。
突如甲高い声が聞こえたと思えば、また彼女が後ろから突進して私の腰を抱きしめる。そのふくよかな胸の感触も昨日と同じだ。
ただ昨日と違うことは突進されて落ちる寸前、なんとか両手を後ろに伸ばして橋の手すり部分を掴んだことだ。もう水面に腹を打つのは御免被りたい。
だがそれだけではなく、今この瞬間に入水することよりも、もう一度彼女の顔が見たくて仕方なかったのだ。
「Aちゃん…!会いに来てくれたんだね、とても嬉しいよ!」
「私はこの状況っ…、全然嬉しくないんだけど…!」
満面の笑みをする私の一方で、私の入水を止めようと必死に抱き締めている彼女のことが可愛く見えた。
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ラザニア太郎(プロフ) - もちうさぎさん» もちうさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます^ ^可愛いと言っていただけて何よりです!そうですね…!修道服、もといシスターの着ている服を参考にデザインしました。ここで画質が悪いのが残念ですが、Twitterにも掲載しますので宜しければご覧ください (2022年11月11日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ(プロフ) - 服が可愛いしシスターって奴だよね! (2022年11月11日 16時) (レス) @page4 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2022年11月9日 16時