3、自己紹介 ページ5
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「自己紹介が遅れたね。私は太宰治、君の名前を聞いても?」
叩かれた左頬がヒリヒリと痛む中、未だ膨れた顔をしている彼女を橋梁の下に座らせて落ち着いたところで、彼女の名を聞いた。
その際にさりげなく、濡れたままであるが私の外套を肩に掛けてあげた。
彼女はむっとした表情で此方を見てから口を開く。拗ねると尚更童顔が極まる女性で可愛らしい。それを言ったら更に怒ろうのだろうな、と思いながら話を聞いた。
「Aよ、さっきはお誘いどうも。丁重ぉ〜に!お断りさせていただくわ」
「それは残念。君みたいな可愛らしいお嬢さんと心中ができたら、とても幸せな死を迎えられるんだろうなぁ」
「かわっ…?!そ、それっ、ナンパっていうんでしょ?!不埒なお誘いはやめてよね!ほ、褒めたって無駄なんだから…!!」
怒った表情をしている彼女は、私の言葉に一瞬目を丸くしてから頬を再度赤らめる。先程とは違う意味の赤色だろう。
ははーん。さてはこの子、男慣れしていないな?と、私は密かに目を光らせた。
このような女の子を嫌いな男はいないだろう。心の中でやましい事を考えている中、彼女はそれを知らず私に自 殺の行為について説こうと必死に頭を働かせようとしているのだ。
照れている最中、何かにハッとした彼女は自身の意識を目覚めさせると、首を横に振って両頬を叩く。
「違う!私が言いたいのはきみの行動についてよ!」
「私は自 殺マニアなのだよ。そういうことだから、“清く明るく元気な自 殺”を座右の銘に、今日もこの晴天に向かって羽ばたく一歩を踏み出したというわけさ!」
「バッカじゃないの?!」
悠々に語る私に、拳が落ちてきそうな勢いで彼女は怒鳴る。
そしてとうとう耐えかねたのか。彼女はが立ち上がり、正義を示す者のように私に指を刺した。
貸していた私の外套がその拍子に肩から落ち、彼女の胸元のロザリオが一瞬反射して煌く。
「神様が与えてくれた命を無碍にする愚行、それは神様の元で生きる修道女の私が許さないわ!」
「ほう…」
彼女は胸を張って勢いよく腰に両手を当てると、びしょ濡れの修道服を揺れて水飛沫が飛ぶ。
そして決意のこもった視線で座ったままの私を見下ろした。
光沢のあるロザリオはきっと丁寧にされているのだろう。
修道女というのが本当ならば、敬虔な信者で間違いない。
そんな一生懸命な彼女は深呼吸をして、意を決したように話をって続けた。
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ラザニア太郎(プロフ) - もちうさぎさん» もちうさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます^ ^可愛いと言っていただけて何よりです!そうですね…!修道服、もといシスターの着ている服を参考にデザインしました。ここで画質が悪いのが残念ですが、Twitterにも掲載しますので宜しければご覧ください (2022年11月11日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ(プロフ) - 服が可愛いしシスターって奴だよね! (2022年11月11日 16時) (レス) @page4 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2022年11月9日 16時