13、花火 ページ15
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ヒューーーー…、ドン______。
観覧車の密閉された空間の中でも、心臓に響き渡る程の大きな爆発音が虚空に響いた。
その刹那、数多の色彩が私達を明るく照らす。
「わぁっ…!これ、花火だよね…?!」
一つの大きな花火に続いて無数の花火が夜空を彩った。
まるで初めて花火を見たかのように、彼女は美しい夜の花々に目を奪われて感動に声を漏らした。
明るくなった部屋の中で再び彼女の横顔が見える。
夕陽に照らされていた時も、花火に心を躍らせているところも素敵だ。
花火など心底どうでもいい。そう考えた時、私は相当彼女に惹かれてしまっているのだと、半ば呆れて自分を自嘲してしまう気持ちになる。
私という人間は、案外単純なのかもしれない。
一人の女性が私にいろんな表情を見せて、言葉を紡いで、笑ってくれて、叱ってくれる。
否、最早、そうしてくれるのは彼女だけでいい_______。
「治くん、あのね」
「…あぁ、うん。なんだい?」
彼女は急に私の方に振り返って問いかける。
考えに耽っていたあまり、彼女を呆然と見つめていたにも関わらず反応が遅れてしまった。
というよりも、見つめていたからこそ不意に動く彼女に少し驚いたというのが正しいのかもしれない。
彼女はそんな私を気にしていない様子で、立ち上がっては私の手を取って此方を見下ろす。
この急接近には流石に動揺しないわけがなかった。思わず、「えっ」と声が出る。
私の手を握る彼女の両手は微かに震えていた。
真剣な眼差しで、尚且つ顔を真っ赤にさせて緊張している。
「さっきの、話の続き…。してもいい?」
「…勿論」
彼女が何を言いたいのか、なんとなくわかっていた。
頑張って言葉にしようとするけど、緊張と羞恥心に苛まれてどう表すか必死に考えている。
そんな彼女があまりにも可愛くて思わずにやけそうになるが、彼女の矜持を守る為に余裕のある表情を貫いた。
一旦深呼吸をした彼女は、もう一度私に向かって話し始めた。
「________…治くんは、私にとって運命の人だよ。
修道院以外の誰かと話すことも、誰かと一緒に街を歩くことも、遊園地に行くことも、手を引かれることも…、全部初めてだったの。
治くんが私の初めてをたくさん教えてくれて、思い出をたくさんくれたんだ。
…だから、私にとってきみは大切で…運命の人なの」
火照る彼女の私に向ける一意な表情と赤裸々な言葉が、まるで花火のように私の心を輝く色彩で無数に瞬かせ、一層鼓動を高鳴らせた。
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ラザニア太郎(プロフ) - もちうさぎさん» もちうさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます^ ^可愛いと言っていただけて何よりです!そうですね…!修道服、もといシスターの着ている服を参考にデザインしました。ここで画質が悪いのが残念ですが、Twitterにも掲載しますので宜しければご覧ください (2022年11月11日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ(プロフ) - 服が可愛いしシスターって奴だよね! (2022年11月11日 16時) (レス) @page4 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2022年11月9日 16時