39、邂逅�� ページ43
．
「あなた、だれ…？」
「っ？！」
少女の声だった。
鈴の音のように澄んでいて小鳥の囀りのようにか細くて、その声は恐怖なのか、微に震えていた。
声の主を確認するために顔を上げる。
「あっ、___________」
絹のような、しなやかで美しいブロンドの髪。
瞳は吸い込まれるほど、綺麗で潤んだ宝石のような碧色。
影を落とすほど長くて上品な睫毛。
傷を知らないくらい白くて、ベールに包まれたかのような肌。
背丈は12、13歳に相応なくらいだった。
驚きで、暫く呼吸をすることを忘れていた。
そして酷い懐かしさが確信となった時、喉の奥が熱くなった。
一目で気づいた。否、誰が気づかないというものか。
母さん譲りの美しいブロンドの髪に優しく慈愛に満ちた瞳______。
この子は間違いなく母さんの子で、俺の妹だった。
「あの、外から来たのですよね、この揺れが何なのかご存知ですか？」
「えぇっと、な……」
聞きたいことが山ほどあった。
何故ここにいる？
今までどうしてた？
元気でいたか？
誰に育てられた？
酷いことされてないか？
俺のことを知っていたか？
最後の疑問は後にすぐわかった。Aは俺のことを最初から兄と認識している様子は皆無だった。
とにかく、言葉が詰まってしどろもどろになってしまった。
だからもう全部、纏めて仕舞えばいい。
「一緒に、ここから逃げよう」
逃げて、母さんのところへ行こう。
母さんだって、きっとまだ生きているはずだ。
そして普通の家族同然の幸せな暮らしをしよう。
そう言えなかったのはいくら血縁関係であっても、初対面だったから、言える度胸がなかったのかもしれない。
それか、彼女のあまりにも不安そうな顔を見て仕舞えば、さらにわからないことで不安を煽るわけにはいかない。
「逃げる、のですか？」
「あぁ…えっと、今この建物に悪い奴が出てな。
とりあえずはここを退散した方が安全ってことだ」
「森おじ様や、エリスちゃんも逃げたのですか？」
「森おじ……うん、まぁ逃げただろうよ」
なんで鴎外のことを知っている。という前にAの森おじ様が引っかかった。
適当な嘘をついて、とりあえず危険なこの場からAと離れようと決めた。
そして出来ればこのまま、どさくさに紛れてマフィアなんぞと縁を切って仕舞おうと目論んでいたが、それも甘い考えのものだったと後になって思い知らされたということは言うまでもない。
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作者名：ラザニア太郎 | 作成日時：2021年12月21日 23時
