新人猟犬、修行中！【条野採菊】【末広鐵腸】

32、譲れない ページ33

条野side






Aさんの大きな声が聞こえると思ったら、鐡腸さんが愛情を確かめるだが何だがいって接吻しようとしていた。



目で見えなくとも、心音の位置で察していた。




鐡腸さん……芸術性を欠いているどころか、女心というものも理解しきれていないのか…。





否、それ以前の話。




鐡腸さんに迫られて、彼女が心拍数を上げているということが気に食わなかった。



体温も次第に高くなって、鼓動が五月蝿くて、呂律の回らなくなるAさん。









________________それを愉しむのは私だけでいい。








気がついたら彼女の肩を引いていた。







「………なんだ、条野。」



「なんだはこちらの台詞です。鐡腸さん。
騒がしいと思えば、いったい何の真似ですか。」



「愛情を確かめようと。」



「意味がわかりません。」






本当に意味がわからなかった。








愛情を確かめる？彼女のことが好き？




憤りを感じた。






彼女は、Aさんは私の愉悦だ。


それを渡す訳には行かない。


ましてやあの鐡腸さんになんてもっての外だ。







嗚呼、退屈を凌げると思ったら面倒事がまた増える。






しかしこんな状況において彼女の狼狽えている時の心音と言ったら面白い。








いいでしょう、鐡腸さん。



貴方も彼女を求めるようなら全力で阻止するまで。



そしてこの愉悦を手にするのは私です。

33、提案→←31、救世主

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す