8話 ページ10
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そして翌日の早朝、早速剣術の鍛錬が始まった。
昨日と同じ外野の訓練場にて、鐵腸さんによる演説が行われる。
「鏑木、戦いにおいて最も重要な事とは何だ」
「えっと…、強い体?」
「惜しい。鋼の肉体と、それに伴う精神力も必要だ。
悪鬼を前に冷静な判断と策を見出し戦う…。それこそ、《猟犬》の戦い方に相応しい」
「なるほど…!」
戦いには強さではなく、冷静さも不可欠…。
鐵腸さんに言われた言葉を頭の中で反芻する。
「そしてその鋼の肉体と精神を鍛える、最善の鍛錬…_____。
…_______即ち“筋トレ”だ」
「き、筋トレ…?!剣術じゃないんですか?!」
「否、剣を握るには相応の身体能力が必要。師として、未熟な今のお前に剣を執らせることはできぬ。
早速走るぞ」
「えっ、ちょっと…!んな急に…!?
______って、鐵腸さん速っ!?待ってくださーい!!」
淡々と説明した鐵腸さんは、私の有無を聞かずに突然走り出した。それも持久走とは呼べないレベルの速さで。
慌てて追いかけようにも縮まない鐵腸さんとの間は、その強さの差を実感させられる。
それでも、頑張らなきゃ…!!
自分の心を引き締めつつ、走る脚をさらに速めた。
△▼△
条野side
「早速やっておるな、あの二人」
朝、本部の窓辺から訓練場を眺める副長の姿があった。
それは酔狂な物をじっくり愉しんでいるような雰囲気だった。例の新人に対して、昨日とは違う反応になっている。
「いいんですか?副長が一番、あの方の入隊に納得いかないご様子でしたが」
「まぁな、じゃが興が乗った。
凡人であった彼奴がこの世界に来てどこまで耐えられるか…、見物だとは思わぬか?」
「…えぇ、それは一理ありますが_____」
ただでさえ面倒な人ばかりの隊に、面倒な人が増えた______。
などと危うく口から本音が出そうになった。もし言ってしまったら、恐らく私はこの場で殺されかけていたことだろう。
思わず口を止めた私に違和感を持った副長は、此方を怪しく見てきた。
なんでもありません。とだけ言うと、副長は鼻を鳴らして再び訓練場を眺め始める。
鐵腸さんの後を必死に追う彼女の気持ちは、室内からでも十分わかる。
馬鹿馬鹿しいほどに、未来の自分に期待して直向きに頑張ろうとする、明るく前向きな気持ち______。
くだらなくて、胸焼けがしそうだ。
「条野、いるか?頼みがあるんだが______」
突如現れた隊長の一言に、更なる面倒事の予感がした。
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とっふ - わぁ……夢主ちゃん可愛い…最高ですね! (1月3日 17時) (レス) @page2 id: 521a35a539 (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - 最高です!続き楽しみにしてます!! (9月21日 20時) (レス) id: 2822ecfe2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2023年3月27日 22時