19話 ページ21
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「己が夢に心を痛め喚くとは…滑稽で堪りません。
貴女自身はどう考えているのです?ほら、早く教えてくださいよ」
私よりも一回り大きい男性、その冷淡な言葉と微笑み。痛く締め付けられる手首に恐怖を感じない筈はなかった。
ただ、それよりも酷く心を蝕んだのは絶望だった。
自分の無力さに打ちひしがれていた心に、とどめを刺されてしまったかのような感覚から再び涙が零れ落ちそうになる。
滑稽で堪らない。そうだ、その通りだ。
でも。それでも、私は_____________。
「…こ___いで…___が___ですか…!」
「はい?」
「っ…!!」
聞こえなかったのか、それとも聞こえなかったフリをしたのか。
条野さんは悪戯っぽく聞き返した。
瞬間、僅かな苛立ちが心の底で爆発した気がした。
突発的に掴まれていた手首を勢いよく振り解く。
条野さんのほんの少し驚いたような顔が見えた気がしたが、そんなことにかまけている余裕がある訳なかった。
「滑稽で何が悪いんですか!?」
こんなに大きな声を出したのは久しぶりだろう。
自分で自分を疑うくらい、震える唇と膠着しかけた体で必死に声を張る。
大きな男性相手に迫られて怖くて堪らなかったのに、一度言葉を放てば留まることを忘れていた。
「幼稚で曖昧な夢だってわかってる!自分の無力さで誰かを傷つけてしまったことも、痛いくらいにわかってる!
でも…!条野さんに“柔な夢”だって言われる筋合いはないっ!!
私は確かに《猟犬》として誰かを護りたい…そう思ってるから…!
条野さんだって此処にいるなら、私と同じじゃないんですか…?」
「…。」
自然と条野さんの顔を見て訴えていた。
その冷淡で何を考えているかわからない表情に、再び恐怖がぶり返されて下に俯いてしまった。先程溢れそうになった涙がぽろぽろと落ちる。
結局、私はこの人に勝てない。勝てない気しかしないのだ。
勢い任せに言うだけ言って、この後どうすればいいかなんてわからない。
何をされるか、何を言われるのか。その沈黙が怖くて条野さんの顔が見れなかった。
条野さんの手がゆっくりと私の頰に伸びてくる。逃げ場はなく、怖くて体も動かない。ぎゅっと瞼を閉じて、更なる危機に覚悟した。
「やめろ、これ以上は許さぬ」
低く凛とした声の主が目の前に迫っていた条野さんの手を止めた。
聞き覚えのある声に顔を上げる。
「凄まじい殺気ですね。お陰で、貴方が直ぐそこまで近づいていたのは気づいていましたよ、鐵腸さん」
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とっふ - わぁ……夢主ちゃん可愛い…最高ですね! (1月3日 17時) (レス) @page2 id: 521a35a539 (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - 最高です!続き楽しみにしてます!! (9月21日 20時) (レス) id: 2822ecfe2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2023年3月27日 22時