新人猟犬、修行中！-再編版-【条野採菊】【末広鐵腸】 (ページ3)

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1話ページ3

Aside

蝉の声がとっくに聞こえなくなり、冷たい秋風を感じる今日。

初めての場所。先程初めて袖を通した隊服。
そして初めましての人が三人。

度重なる初めてに緊張しないわけもなく、昨夜必死に覚えた自己紹介が飛びかける。

「こ、この度っ！特殊制圧…えっと、こぅ…ぶ…？」

「《猟犬》でいいぞ…！」

「こっ、この度、《猟犬》に所属させていただくことになりました。鏑木Aです！よろしくお願いします！」

「ということだ！諸君！！
A君と仲良くしてやってくれ！！」

隣で耳打ちをして助けてくれたのは、世界の英雄と謳われる福地桜痴。
そして私が今日初めて袖を通した隊服とは、彼と同じものである。

そう、私は本日から軍警の犬となったのだ。

「…一体何の冗談です？そのような話、聞いていませんでしたが」

「まぁまぁ、そう言ってくれるな条野。
急なことだとは承知だ。だがこれには深い訳があってな…」

「隊長〜ッ？！何処からこのアマ連れてきたんですか？！
真逆貴様ッ！隊長を誑かしたのか？！
断固許せぬ！細切れにして海に捨ててやるわ！！」

「落ち着いてください副長、先ずは訳を聞きましょう」

「えぇい止めるな鐵腸！あの女の口から言うことを簡単に受け入れられるかっ！！」

「聞いてくれるか？燁子君」

「はぁい♡隊長のご命令とあらば♡」

何これ怖い…。もう帰りたいよお母さん…！

呆れた物言いで、完全に表情が冷めてしまっている銀髪のお兄さん。
怒りを露わにし、今にも私に飛びかかろうとする幼女。…副長と呼ばれていたのは気のせいだろうか。
そんな幼女を止める黒髪のお兄さん。一番まともに見えるが、何故か上裸になっている。

この人たちが国内最強の人材と呼ばれる《猟犬》______。
私は今日から、この仲間入りをする。

…やっていける気がしない。怖くて涙が出そうだった。

△▼△

遡ること、半年前。
高校3年生に成り立ての頃、学校の授業が終わっていつも通り家に帰ってきた日のことだった。

「ただいま〜。お母さん、お腹減っ…」

「おう、A君。お帰り」

「…えっ？！いやっ、え？！ほっ、ホンモノ？！」

家のリビングで普段見ないような、高そうなお菓子とお茶を出されている英雄の姿があった。
テレビや映画でしか見たことない貫禄に怯んで、思わず腰を抜かす。

「あッ、アンタ、今日は軍警の方が来るって言ったでしょ！」

「忘れてたって！忘れてたけどそういうレベルじゃないじゃん！」