検索窓
今日:8 hit、昨日:5 hit、合計:11,962 hit

13話 ページ15

.


「溜息など吐いてどうした」

「鐵腸さん…、お疲れさまです」


いつのまにか同じ事務室にいた鐵腸さんに声を掛けられる。
私の表情が奇しいものだったのか、「む…。」と訝しげに私の顔を覗いてきた。

端麗な顔立ちがぐっと近づいて、思わず声が出そうになる。


「真逆、条野に虐められたか?」

「いやいやっ!近いというか遠いというか…、寧ろ自分の不甲斐無さがわかったというか…」

「そうか。彼奴は人を痛ぶることを愉しむ癖がある。
もし何かあれば俺に言うといい。刺しておく」

「刺し…?わ、わかりました」


鐵腸さんの最後の一言は気のせいだと思ってスルーした。


「鐵腸さんの言っていた、鋼の精神っていうのが少しわかった気がしました。
戦うのにも、救いの手を差し伸べるにも、これがいかに大切なことかって…」

「なら、やるべきことはわかるな」

「はい!」


鐵腸さんの背中を押す言葉に、自然と背筋と胸が張る。

もっと強くならなきゃ…!
まだまだこれからなんだから_____!


「ということで今からスクワット百回」

「ひぇっ?!…頑張ります!」


△▼△


入隊してから一ヶ月が経過した。

手術を受け、身体強化を得てはいながらも、鐵腸さんの筋トレメニューは酷なものだった。
日々の筋肉痛にようやく慣れ、自らの成長を少しだけ自覚することができた頃。私は隊長の呼び出しを受けた。


「A君。君に初任務を命じよう」

「初任務…ですか?」

「そんなに緊張しなくてもいい、鐵腸も付いているからな」


「なぁ?」と、隊長が一瞥をくれた先には逆立ちをしている鐵腸さんがいる。
一緒に呼び出しを受けてからずっとこの状態だったが、一ヶ月も経つと、マイペースに筋トレをする鐵腸さんには慣れてしまった。

隊長の一言に無駄のない着地をした鐵腸さんは、堂々とした面構えを見せる。


「はい。この刃に懸けて、必ずや任務を果たして参ります」

「よし、早速任務の概要なんだが__________」


△▼△


某日、日暮れ時。
私と鐵腸さんは都市郊外にある薄暗い森林に訪れた。


「もう一度確認する。先程令状が出た麻薬密輸組織の逮捕が今回の任務だ。
組織の規模はそこまで大きくない。だが、油断は禁物だ」

「りょ、了解…です」


木々の隙間から木洩れ出る僅かな陽の光が、不気味に緊張感を駆り立てる。
腰に掛けた軍刀がとても重く感じた。これからこの武器を取って、私は戦う____。


「…鐵腸さん。私、剣の扱い方習ってないですよね…?」

14話→←12話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
72人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

とっふ - わぁ……夢主ちゃん可愛い…最高ですね! (1月3日 17時) (レス) @page2 id: 521a35a539 (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - 最高です!続き楽しみにしてます!! (9月21日 20時) (レス) id: 2822ecfe2a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2023年3月27日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。