13話 ページ15
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「溜息など吐いてどうした」
「鐵腸さん…、お疲れさまです」
いつのまにか同じ事務室にいた鐵腸さんに声を掛けられる。
私の表情が奇しいものだったのか、「む…。」と訝しげに私の顔を覗いてきた。
端麗な顔立ちがぐっと近づいて、思わず声が出そうになる。
「真逆、条野に虐められたか?」
「いやいやっ!近いというか遠いというか…、寧ろ自分の不甲斐無さがわかったというか…」
「そうか。彼奴は人を痛ぶることを愉しむ癖がある。
もし何かあれば俺に言うといい。刺しておく」
「刺し…?わ、わかりました」
鐵腸さんの最後の一言は気のせいだと思ってスルーした。
「鐵腸さんの言っていた、鋼の精神っていうのが少しわかった気がしました。
戦うのにも、救いの手を差し伸べるにも、これがいかに大切なことかって…」
「なら、やるべきことはわかるな」
「はい!」
鐵腸さんの背中を押す言葉に、自然と背筋と胸が張る。
もっと強くならなきゃ…!
まだまだこれからなんだから_____!
「ということで今からスクワット百回」
「ひぇっ?!…頑張ります!」
△▼△
入隊してから一ヶ月が経過した。
手術を受け、身体強化を得てはいながらも、鐵腸さんの筋トレメニューは酷なものだった。
日々の筋肉痛にようやく慣れ、自らの成長を少しだけ自覚することができた頃。私は隊長の呼び出しを受けた。
「A君。君に初任務を命じよう」
「初任務…ですか?」
「そんなに緊張しなくてもいい、鐵腸も付いているからな」
「なぁ?」と、隊長が一瞥をくれた先には逆立ちをしている鐵腸さんがいる。
一緒に呼び出しを受けてからずっとこの状態だったが、一ヶ月も経つと、マイペースに筋トレをする鐵腸さんには慣れてしまった。
隊長の一言に無駄のない着地をした鐵腸さんは、堂々とした面構えを見せる。
「はい。この刃に懸けて、必ずや任務を果たして参ります」
「よし、早速任務の概要なんだが__________」
△▼△
某日、日暮れ時。
私と鐵腸さんは都市郊外にある薄暗い森林に訪れた。
「もう一度確認する。先程令状が出た麻薬密輸組織の逮捕が今回の任務だ。
組織の規模はそこまで大きくない。だが、油断は禁物だ」
「りょ、了解…です」
木々の隙間から木洩れ出る僅かな陽の光が、不気味に緊張感を駆り立てる。
腰に掛けた軍刀がとても重く感じた。これからこの武器を取って、私は戦う____。
「…鐵腸さん。私、剣の扱い方習ってないですよね…?」
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とっふ - わぁ……夢主ちゃん可愛い…最高ですね! (1月3日 17時) (レス) @page2 id: 521a35a539 (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - 最高です!続き楽しみにしてます!! (9月21日 20時) (レス) id: 2822ecfe2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2023年3月27日 22時