25、原罪と春の君*条野採菊 ページ16
条野side
好きな人だからこそ、知られたくない自分の本性や過去というものがある。これは誰にでも言えることだろう。
少なくとも私にとっては大きく頷けることだ。
もし彼女が私の過去を知ってしまったら、一体どのような反応をされるのか。正直、怖いとさえ思う。
「何故国の犬なんかに寝返った！この裏切り者が！」
とある犯罪組織の拠点を突き止め制圧した時のことだった。
拘束された一人の男が私に対して凄まじい殺意と憎悪を抱いて吠える。
その男は過去に縁のある相手だった。私が非道に手を染めていた時の良い取引相手でもあり、過去の私を知っている者ある。
「この職だと、よりいい音が聞けるのでね」
「ぐぁッ？！」
男の横腹を蹴り上げ、コンクリートの床に叩きつけてその顔を踏みつけた。汚い声をあげて痛がっているのを聞くと、思わず口角があがる。
「相変わらずの悪趣味だな…！」
「軍警になってからもいろんな音を聞きましたよ。
破滅の音も、苦悶の声も…。これから聞くであろう悲鳴もね」
そう言いながら、もう一度じりじりと奴の顔を踏み躙った。男は心底悔しそうに歯軋りを立てながら苦しみもがく。
実に滑稽なものだろう。そう思いながら別の感情が悦に浸る精神を蝕んで苛立ちに変わる。
この時の私は何故なのか、一抹の焦りを抱いていた。
好いている女性と密接にある職を全うする今、過去のことに触れたくも気づきたくもなかったのだ。それがこの男の存在によって思い起こされてしまった。
私のような過去を持つ人間は十中八九忌み嫌われる。他人なら心底嫌ってもらって構わないが、彼女だけは別だ。
一般常識を当たり前に心得る彼女にとって、私の経歴は幻滅に値する筈。そう思えば思うほど、焦りが言動に出てしまっていた。
苛立ちの根本である男を虐めてみても決して収まることはなかった。なのにまだ痛めつけてやりたいとこの足が止まらない。
痛みに耐えながら苦節を保つこの男の態度を毒手にかける度、みっともないものだと嘲笑った。
まるで私自身が過去をねじ伏せて隠すその様が。
「軍警って…、冗談キツいじゃねぇか元幹部がよ…！
何も変わっちゃいねぇ…！その表情、犯罪者のモンだ！」
「…えぇ、そうですよ。どう考えたって、私は______」
ふと、心臓がドクンと波打った。途端に頭が真っ白になる。
背後にいつのまにか現れていた、私より一回り小さな女性の足音と、その鼓動。
気づいた時には、もう遅かった。
「条野、さん…？」
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ラザニア太郎(プロフ) - 紙さん» ありがとうございます…！ぜひ仲良くしてください^ ^ (6月3日 15時) (
レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
紙(プロフ) - Twitterありがとうございます！！絵も可愛いですー！！ (6月3日 12時) (レス) id: 60978e9706 (このIDを非表示/違反報告)
ラザニア太郎(プロフ) - 紙さん» はじめまして、コメントありがとうございます^ ^お褒めいただいて大変嬉しいです！Twitterの方も先程承認しました。何もかも低倍速ですが、どうぞよろしくお願いします…！ (6月3日 11時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
紙(プロフ) - ラザニア様の小説面白くて時間を忘れて読み進めてしまいました！応援してますー！Twitterの方あと、フォローさせて頂きました！ (6月3日 11時) (レス) @page1 id: 60978e9706 (このIDを非表示/違反報告)
ラザニア太郎(プロフ) - リアリスさん» 初めまして、コメントありがとうございます。本来攻めである側や、男側が何らかの拍子で弱っちゃうシチュがたまらんく性癖で…！いくつか書いてるのですが、そのようなご感想いただけてよかったです！ありがとうございます！ (2023年3月27日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラザニア太郎 | 作成日時：2022年12月14日 10時
