大胆な彼女は夢現？�� ページ13
.
「んっ…」
身構えていたせいか。彼女が再び俺の首筋に唇を近づけて当てられた時、その僅かな生温かさに思わず反応して声が出た。
また噛まれるのだろうか。流石に二度目は情けなく悲鳴をあげたりしない。
彼女から与えられる刺激を甘受しよう、そう思って彼女の腰に回している腕の力を更に強くした。
「…？A、何をしている」
首筋からの刺激はあまりに弱いものだった。
ちゅうちゅうと、皮膚が優しく吸われている感覚である。行動の予想とあまりに反していて目を丸くしてしまう。
「あれ、うまくつかない…」
「…もしかして接吻痕のことか？」
「はい…。鐵腸さんよくやってきますよねぇ。あと条野さんも」
「…。」
ここで条野の名前が出てきて不快な気持ちにさせられた。
彼女は今の状況でさえ、他の男のことが脳裏に過ぎるというのか。これは酔いのせいにしきれない。あまりに分が悪すぎる。
「ひゃあっ？！」
気づいたら怒りのままに彼女の首筋に牙を立てていた。
朧げな口調だった彼女が途端に甲高い悲鳴をあげる。
「接吻痕だったな。もっと強く吸ってみろ、こんなふうに…」
「やぁっ…、んくぅっ…！」
びくびくと彼女の身体が痙攣する。先程の俺はこのような様だったのだろうか。だとしたら、俺と彼女は同じ快感を共有したことになる。そう考えると嬉しくて堪らない。
一度彼女から口を離すと、若干息が切れて潤んだ瞳から涙を流す愛らしい顔見えた。
その首筋には歯形と紅い鬱血痕が浮かび上がっている。気持ちが高揚して更に鼓動が高鳴った。
「ほら、もう一度俺にしてみてくれ」
「はい…」
彼女は言われるがまま俺の首筋に顔を近付ける。そして再び皮膚を吸い始めた。
「っ…、そう。その調子だ」
必死になって吸い続ける彼女の頭を優しく撫でてやる。えもいわれない優越感と幸福感で心が満たされた。
条野にはこんなことしていないだろう、する筈がない。そもそも組み敷かれていることすらもないだろう。
酒のせいではあるとはいえ、彼女は今俺だけを見ている。俺だけに触れて、感じているのだ。そのことの嬉しさと言ったら言葉にできない。
なんだか条野に勝った気がしてすっかり浮かれていた。だがしかし、それも束の間だったらしい。
「…A？」
吸われる感覚がなくなったと思えば、彼女は俺の首筋に食んだまま、規則正しい寝息を立てていた。
出来事の終わりがあまりにも突然すぎで、暫く放心状態になってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ラザニア太郎(プロフ) - 紙さん» ありがとうございます…！ぜひ仲良くしてください^ ^ (6月3日 15時) (
レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
紙(プロフ) - Twitterありがとうございます！！絵も可愛いですー！！ (6月3日 12時) (レス) id: 60978e9706 (このIDを非表示/違反報告)
ラザニア太郎(プロフ) - 紙さん» はじめまして、コメントありがとうございます^ ^お褒めいただいて大変嬉しいです！Twitterの方も先程承認しました。何もかも低倍速ですが、どうぞよろしくお願いします…！ (6月3日 11時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
紙(プロフ) - ラザニア様の小説面白くて時間を忘れて読み進めてしまいました！応援してますー！Twitterの方あと、フォローさせて頂きました！ (6月3日 11時) (レス) @page1 id: 60978e9706 (このIDを非表示/違反報告)
ラザニア太郎(プロフ) - リアリスさん» 初めまして、コメントありがとうございます。本来攻めである側や、男側が何らかの拍子で弱っちゃうシチュがたまらんく性癖で…！いくつか書いてるのですが、そのようなご感想いただけてよかったです！ありがとうございます！ (2023年3月27日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ラザニア太郎 | 作成日時：2022年12月14日 10時
