【QK】さながら茨を巻くように。【短編集】

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パソコンのキーボードに触れる手を止めて時計を見上げる。

お腹が空いたなと思っていたら、もう昼を少し過ぎていた。

お昼休憩と称して近くのコンビニで適当に買って胃に押し込んだ。

正直、ご飯を食べたい気分ではなかった。


…今日、朝起きたら涙が頰を伝って乾いていた。

気分は最悪だし、悲しいし、ずっと仕事に没頭していてもふとした言葉に彼がチラつく。


(…私、あの人のこと、好きだったのかな)


もしかしたら、完璧にしていたはずなのに振られたから、ショックなのかも知れない。

…だとしても、悲しい事には変わりない。


「はぁ…」


切り替えなければと途中だった作業を再開する。

福良さんから確認を頼まれていた記事は＿皮肉にも恋愛の記事だ。


『皆さんは、恋人がいるでしょうか。僕はいません。ということで今回は＿』


私もいなくなりました、と心の中で応える。

その状態があまりにも滑稽で、目に涙が溜まった。


(あ、やば、)


抑え切ることが出来ずに、溢れた。

ティッシュないのにどうしようとかメイクが崩れるとか、頭で色々考えても涙は止まらない。


「っえ、泣いてるの？」

「…」


後ろに福良さんが通りかかった。

答えれば大声をあげて泣いてしまいそうで、応えられない。

というか、見られた。

福良さんは別室で撮影の準備をしているはずだったのに。


「あーティッシュティッシュ…って、ティッシュもうないじゃん！隣の席から借りちゃおう。ほら、大丈夫？」

「…」


首を横に振って見せた。

大丈夫だったら泣いていない。


「うーん…。この時期とこの感じだと、彼氏と別れた？」


頷くと、「まあ…だよねー…」と返された。

福良さんは優しく私の背中をさすってくれた。

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