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その日から何年が経っただろうか。俺の年齢はギリ2ケタだったはず。20年以上も前になる。
今日は、その日のことを彷彿とさせるような、日差しが強い日だった。そんな昔のことを、俺は今でも鮮明に覚えていられる。
｢須貝さんのそれ、かっこいいっすよね｣
｢…あぁ、これねー｣
｢須貝さん鉱物好きですもんね。買ったんですか？｣
そう言って伊沢が指さしたのは、カバンについてた青い瑪瑙のストラップ。あの日に貰ったものに穴を開けて紐を通したものだった。手作りにしては良い方だと思う。
あの日の事を忘れたくなくて、いつも身につけておきたくてこれを作った。無くても忘れられないとは思うけど。
どこか、希望を探していた。願っていた。望んでいた。
また君に、もう一度会えるんじゃないかって。
Aとは、確かに幼なじみだったし、よく遊んだはずなのに、彼女との思い出は、川で遊んだ記憶だけだった。どうしてかは分からない。ただ、小さい頃の記憶なんてそんなものだろう。
中学生になって、どうしても会いたくなって、でもその名前を探しても見つからなくて、きっと引越してしまったんだと、そう察した。
会いたいと、強く思った。
もし離れてしまうことが運命だったとしても。その運命とやらに逆らって、もう一度君の手を掴みたいと思った。
｢…へぇー、ロマンチストですね。理系なのに｣
｢別にそこまでじゃないでしょ。てか理系なのにって何よ｣
｢そういう人達って運命とか非科学的なこと信じなさそうじゃないですか。ほら、あの人とか｣
そう言うとちら、と横を見た。目線の先には、足を組みながらパソコンをいじる河村くん。あぁー、とつい共感の声が漏れてしまった。そんな俺らの目線を感じとったのか、ふと上を見上げて目が合うと、俺は分かりやすく目を逸らす。溜息を
｢…なんの話してたんですか、僕の方見て｣
｢ロマンの話。河村さんってそういうの信じなさそうだなーって｣
さっき俺が伊沢に話した内容を、伊沢がそのまま河村くんに話す。一通り話を聞いて、河村くんはなるほど、と呟いた。
｢僕はそもそもそういった経験がないので。でも素敵じゃないですか｣
｢会えるんじゃないですか？青瑪瑙の石言葉って"奇跡を呼ぶ石"…とかじゃなかったですっけ｣
｢……まぁ、会いたいよなぁ｣
ストラップをいじりながらそう答える。俺はまた、あの日のことを思い出していた。
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