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いつの間にか着いていた、人影もないような神社の会談に腰かけて、大きく伸びをする。頭に血が巡れば少しは思考もまとまるだろう。
花火に照らされて、大きく伸びをする俺の横で、Aはラムネを開けようとしている。しゃがみこんで、玉押しを瓶の口にグッと押し付けた。
瞬間、ぷしゅ、と音がして、ラムネが吹き零れる。
わっ、なんて、間抜けな声と共に手を離されたそれは、口からどんどん泡を吹き出させて容量を半分ほど減らす。
「あー!もったいない」
こぼれたラムネでべたべたになってしまった瓶を軽く拭って、彼女は瓶の中身を喉に流し込む。細かな泡がひっきりしに底から沸き上がって、彼女はその刺激を美味しそうに飲み干した。
「拳も飲む?」
はい、と軽く傾けられてこちらを向くラムネを受け取ったのは、あまりにも彼女が美味しそうに飲んだからだろうか。
あまり得意ではない炭酸を喉に少しだけ流すと、舌の上でビリビリと刺激を与えたそれは、俺の喉にダメージだけを与えて流れていく。
びいどろの味は幽かで涼しい味で、詩美的な味覚が漂うと評価したのは、誰だっただろうか。そんなはずないだろうと顔を歪め咳き込む隣の彼女はけらけらと笑った。
「炭酸苦手なら無理しなくても良いのに」
俺の背を軽く叩いて、彼女は自分の手にラムネを戻す。未だ喉元で炭酸が炸裂した俺をよそに、彼女は残りのラムネを飲み干した。
彼女は飲み終わったラムネの瓶の中を覗き込んで、軽く瓶を揺らす。
揺れる度にコロコロと転がるそのガラスの玉は、ガラスの瓶とぶつかり合ってカラカラと涼しげな音を響かせている。
「瑠璃だね」
「瑠璃?宝石の?」
「昔はガラスとかガラス細工のこと瑠璃って呼んでて、朝鮮とかだと、まだガラスのこと瑠璃って呼んだりするらしいよ」
ヘー、と言いながら彼女はまたまじまじと瓶の中を覗き込む。
しばらくして、くるくるとラムネの瓶の口を外し、中の玉を手に取った。
「じゃあこれ、私の宝石だね」
ラストスパートなのだろう、盛大に上がった花火をビー玉越しに見て、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
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