きゅう、 ページ11
目が覚めると同時に襲って来たのは、腰の痛み。ずきり、ずきりと脈打つような痛みに思わず顔を顰めた。
そして、昨日の出来事を思い出す。厭、窓も時計もない此の空間には幾ら時間が経ったかを知る術が無いから、何とも云えないのだけど。
…欲を貪る獣の様な太宰さんは、私にとって恐怖でしか無かった。与えられる悦楽も連続的で、強引で、容赦もなく、只辛い筈だった。
然し気付けば其の悦に溺れかけている私が。
太宰さんの背を掻き抱き、散々甘声を上げ太宰さんを受け入れようとしている私が、其処に居た。
「…ふふ、可愛いね。ほら此処は如何かな、……っは、気持ち善いんだね?素直に反応しちゃって」
「え?もう限界…?…何云ってるの、君の躰は未だこんなにも私を求めていると云うのに。…ほら腰上げて、もう一回」
「嗚呼きっと、此れが愛なんだね。君を離したくない、君は一生私だけを見ていれば、其れで善いよ」
艷やかで色気立つ彼の声は、私を難なく蕩けさせた。…思い出すだけで、背筋が震えそうだ。
ふと辺りを見渡すも、彼は居ない。安堵の様な、不本意乍も寂寥感の様なものを覚える。
『………太宰さん、』
ぼうっとした、薄ら気な意識の儘彼の名前を呼ぶと、行き場を失くした涙が溢れて来た。
『太宰さ、ん…判らないです、此れは、此の感情は、太宰さんに依って作られたものでしょうか。はたまた、私自身の本心でしょうか、』
ふるふると首を振る。厭だ、そんなの認めたくない。彼は身勝手な理由で私を拘束した上に閉じ込めまでしたんだ。
そんな彼を、一時でも甘受して仕舞ったなんて。信じたくない、駄目だ、自分を持たなきゃ。
『……駄目、駄目駄目。私は、私は…』
其の言葉を口にした瞬間、奥の扉が開いた。びくり、と肩を揺らすと、私を振り回している本人が其処に現れる。
「…莫迦だねえ、君は本当に莫迦。先程迄私をあんなに求めていたのに、何を今更」
『だざ、さ、違、私は……』
溜まった涙を何とか彼の前では流すまいと、ふるふる首を横に振ると、太宰さんは私の居る寝台へ歩み寄り、昨晩の様に抱き締めた。
恐怖から一瞬押し返そうと片手を彼の胸へ触れてみたものの、植え付けられた別の恐怖が勝って仕舞い、彼にされるが儘となる。
「善いんだよ、何も考えなくて善いんだ」
違う、此の人が元凶なのに、
「A、」
なのに如何して___
如何して、こんなにも安心して仕舞うの、?
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伊波トウナ(プロフ) - えっおわりです…?! (2023年2月16日 11時) (レス) @page17 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
湯川 - 終わっちゃったよ…あと26回くらい見れる笑 (2021年11月27日 7時) (レス) @page17 id: b53f4168a8 (このIDを非表示/違反報告)
天ぷら - 終わりなんですかぁぁぁぁぁぁあ (2021年9月12日 10時) (レス) id: b7f3dee41e (このIDを非表示/違反報告)
あきら - 素晴らしいです。更新待ってます。 (2018年11月25日 1時) (レス) id: a0d4f48c92 (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - 太宰さんの一方的で押し付けるような愛の形が好きすぎて…!支配的な愛情表現がたまりません!応援してます! (2018年8月27日 23時) (レス) id: 59706cc241 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千紘 | 作成日時:2018年8月9日 16時