検索窓
今日:25 hit、昨日:5 hit、合計:11,942 hit

7 ページ9

『早く行かなきゃ』

パタパタと道路を走る。
愛おしい彼の元へ、早く行きたくて。

記憶が無くても、私にとっては、たった一人の彼。
私には、彼しかいない。

いつ戻るか分からない。
だが、時間と何かきっかけが有れば記憶が戻ってくる。
そうお医者さんは言っていた。

最初にきっくんが記憶喪失、と聞いた時は
悲しいよりも、罪悪感が芽生えた。

唯一の救いは、MSSPの3人を覚えてくれていた事。
無くなった記憶は、私の事だけ。

悲しかった。何よりも。
でも、彼が生きている事が嬉しかった。

今は頭に包帯を巻いて、手足は軽い骨折。
痛々しい傷痕。
それでも、彼は生きている。
たとえ私の事を忘れているとしても。

必ず思い出させてみせるから。

病院につき、彼の病室へ急ぐ。


静かにスライド式の扉を開ける。

ひょこっと中を覗くと、スゥスゥと眠っている彼が。

起きるまで待とう、そう思い、きっくんの寝ている側に椅子を持ってきて、座る。


痛々しい傷。
頭の包帯。

それを見て心が痛む。

『ごめんね…』
小さく呟き、そっと傷に触れる。

「ん…、あ、れ?」

『!!』
バッと手を引く。
起こしちゃった…。

「A、ちゃん……?」

『…ごめんね、起こしちゃった…』

必死に笑顔をつくってそう言う。

きっくんは、んーん、大丈夫。と私に微笑んだ。

やっぱり彼はかっこいい。
そんな事を考え、顔に熱が集まる。

腕で顔を覆う。

「…?大丈夫?」
きっくんは顔の赤い私を気にかけ、心配そうに声を掛けてくる。

大丈夫、と言おうとすると、頭に手を置かれる。

きっくんに優しく撫でられ、また顔が熱くなる。
ボロボロと涙まで出てきた。

「うえぇ!?ごめんッ!?」
バッと手が離れる。

『あ、えっと、ごめん…ッきっくんが悪い訳じゃ無いの…!!』

急いで涙を拭う。
彼を、きっくんを不安にさせちゃ駄目だ。

駄目、なのに。


『…ッきっくん………!!!!』

何で出てくるの。

見せたくないのに。


きっくんは、私の涙を止めようと体を起こして、私の頭を再び撫でる。
よしよし、と言いながら撫でてくる。


撫でながら、ねぇ、ときっくんの声がする。

『…、な、に?』
嗚咽を漏らしながら聞く。

顔を上げると、きっくんが心配そうに首を傾げ、大丈夫?、と聞いてくる。近い。

私は大丈夫!!、と言い、涙を拭う。
きっくんの手が離れる。
少し寂しい、なんて。

そして、きっくんが聞きたいことがあるの、と言って、私を見つめた。



…?
嫌な予感がする。

8→←6



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
41人がお気に入り
設定タグ:MSSP , 実況者 , きっくん   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ふらっち(プロフ) - うずらさん» 両思いやんクソうれぴよ。ピブー( ˇωˇ ) (2017年7月10日 19時) (レス) id: 73f6e2f7d4 (このIDを非表示/違反報告)
うずら(プロフ) - ふらっちさん» 両思いだ(´・ω・`)やった(´・ω・`)(謎のテンション) (2017年7月10日 18時) (レス) id: 6e3abf552a (このIDを非表示/違反報告)
ふらっち(プロフ) - うずらさん» ありがとうございます…( ˇωˇ )お友達なりましょ…??( ˇωˇ )好きです…( ˇωˇ ) (2017年7月10日 15時) (レス) id: 73f6e2f7d4 (このIDを非表示/違反報告)
うずら(プロフ) - めっさ面白い……(´・ω・`)作者さんとお友達になりたい(´・ω・`)すき(´・ω・`) (2017年7月10日 9時) (レス) id: 6e3abf552a (このIDを非表示/違反報告)
ふらっち(プロフ) - なーやさん» 読んで下さったんですか!?ありがとうございます…!!更新頑張りますね!! (2017年3月27日 16時) (レス) id: 73f6e2f7d4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ふらっち | 作成日時:2017年3月22日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。