30 ページ32
『…そ、れは』
なんでだろう
助けて欲しいのに、言えない。
父さんがお兄ちゃんと私に暴力を…、なんて言えるわけない。
なら何できっくんに、この人に助けを求めたのか。
黙っていると、きっくんの手が頭に置かれる。
わしゃ、と頭を撫でられ、わけが分からない。
『な、何…きっくん』
「言いたくないなら言わなくても良いけどさ、Aはそれで良いの?」
真っ直ぐな瞳で見られ、正直に首を横に振る。
「…言える?」
『…うん』
少し微笑んでから、きっくんは手を離した。
『あのね、私のお父さんが、ね。私とお兄ちゃんをね、殴ったり蹴ったり刺したりするの。それが怖くて、痛くて、逃げたかったんだけどね、家に閉じ込められてて、出れなくて…ッ』
ここまで話して、ようやく気づく。
『お兄ちゃん…ッ』
お兄ちゃんが危ない、そう思った。
私がいなくなって、父さんは怒ってお兄ちゃんに当たると思う。
そしたら…?
興奮し過ぎて、父さんはお兄ちゃんを…
私はベッドから勢い良く飛び出した。
「…!?A…」
私の名前を呼んでから、察しがついたのか、俺も行く、と言って着いてきてくれた。
家に向かって走る。
こんなに走ったのはいつぶりだろう。
息がきれる、苦しい。
「大丈夫かA…ッ、家どっちだ!?」
そう言いながら私を担ぐきっくん。
『…ッ、あそこの、二つ目の角、右…』
「了解。ごめん、ちょっと揺れるぞ」
きっくんが走って私が道案内をする。
きっくんは息がきれそうで辛そうな表情で。
どうして私なんかの為にそこまでしてくれるのか、とも思ったけど。それはまた今度聞くとして。
『…ここ!!』
「おっけー!!!!」
そう言ってきっくんは扉を開けようとする。
でも鍵はあいてなくて、開かない。
一気に血の気が引く。
ガコンっと大きな音を立てて扉が取れる。
…取れる?
「開いてなかったら開ければ良い、でしょ?」
二ィッと笑って、行くぞ!!!!、と言いながら中に入るきっくん。その後ろに着いていく。
{…ッ!!!!…!!!!}
父さんが何か叫んでいる。
お兄ちゃんの声も聞こえる。
[父さ、やめ…ッぁ]
声のする部屋に入ると、父さんがお兄ちゃんを壁に追い詰め、首を絞めていて。
『…ッとうさ、やめ…おにいちゃ…ッ!!!!』
ガンっと鈍い音。
それと同時に、父さんの呻き声とお兄ちゃんの荒い息。
「自分の子供に何してんだよ…ッ!!!!」
低い声で怒鳴ったのは、私に優しく微笑みかけてくれていた、きっくんだった。
41人がお気に入り
「実況者」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふらっち(プロフ) - うずらさん» 両思いやんクソうれぴよ。ピブー( ˇωˇ ) (2017年7月10日 19時) (レス) id: 73f6e2f7d4 (このIDを非表示/違反報告)
うずら(プロフ) - ふらっちさん» 両思いだ(´・ω・`)やった(´・ω・`)(謎のテンション) (2017年7月10日 18時) (レス) id: 6e3abf552a (このIDを非表示/違反報告)
ふらっち(プロフ) - うずらさん» ありがとうございます…( ˇωˇ )お友達なりましょ…??( ˇωˇ )好きです…( ˇωˇ ) (2017年7月10日 15時) (レス) id: 73f6e2f7d4 (このIDを非表示/違反報告)
うずら(プロフ) - めっさ面白い……(´・ω・`)作者さんとお友達になりたい(´・ω・`)すき(´・ω・`) (2017年7月10日 9時) (レス) id: 6e3abf552a (このIDを非表示/違反報告)
ふらっち(プロフ) - なーやさん» 読んで下さったんですか!?ありがとうございます…!!更新頑張りますね!! (2017年3月27日 16時) (レス) id: 73f6e2f7d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふらっち | 作成日時:2017年3月22日 18時