右腕 ページ29
戦いが明けた数日後、私はトニーのタワーに呼び出されていた。
特に大した様ではないらしいが、来てそうそう私の腕を取り外すと澄まし顔で修理に取り掛かったのだ。
痛がる私を他所に。
『ク、クソ…一度ならず二度までも…痛た…』
｢A…だ、大丈夫かい？｣
腕を抑えて座り込む私を、バナーが心配そうに背中を擦る。
気遣ってくれた事は素直にありがたかった。
『…しばらくしたら痛みは引く。ああ、敵の攻撃よりも酷い痛みだ。是非味あわせてやりたいね…』
恐らく修理をするトニーの方を睨んだかもしれない。
バナーが苦笑いをしていた。
｢うん…その痛みを味あわせてやりたいのはよく分かるけど、絶対辞めてね？｣
『冗談だよ、冗談。…本気だったら槍でも投げてるさ』
小さく深呼吸をしてから壁に寄りかかる。
もう大丈夫かと思ったのか、バナーはその場を後にした。
バナーが居なくなって数分後、私は腕の修理をするトニーに声を掛けた。
『…ほんとは腕を直す事が目的じゃないんだろ』
すると、トニーは作業の手を止めて私を見た。
｢よく分かったな、全く持ってその通りだ｣
『じゃあその目的とやらを聞かせてくれないか。じゃないと腹の虫が収まらない』
私がそう言うと、トニーは手に持っていた道具を置いて私の前に座り込んだ。
｢簡単な目的だ、実は君にはここニューヨークに残ってもらいたくてね｣
『…それはアメリカでヒーロー活躍を続けろって事？』
｢それも一理あるが、もう一つ｣
『…？』
つまる所、日本には帰るなと言う事だろうか。
故郷に帰れないのは中々に辛いぞ。
｢いいか、あの腕がある限り…君は僕から離れるんじゃない｣
『……ある種の束縛宣言か？』
｢違う、真面目に聞け｣
冗談半分でそう口にすると、トニーに冷たい目線を投げられた。
でもそう捉えても可笑しくはないんじゃないか。
｢帰ってもらって困るのは僕の方なんだ、考えても見ろ。もしも君が日本であれを壊したらどうするつもりだ？
僕が直々に日本までやって来て修理するのも効率が悪い。何よりそれだけに金が掛かるからな｣
『…つまりは、何時でも修理が出来るように留まれ、と？』
｢そういう事だ｣
成程、理解は出来た。
確かにここに留まった方が修理は何時でも出来るし、使っていく内に改善する事も出来る。
互いに効率的な事が出来るという事だ。
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ゆず招き猫(プロフ) - まべさん» ありがとうございます！頑張らせて頂きますね…！！ (2019年7月8日 21時) (
レス) id: 58755f093a (このIDを非表示/違反報告)
まべ - とっても面白いです！更新頑張ってください！ (2019年7月8日 20時) (レス) id: c2b967cffd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆず招き猫 | 作成日時：2019年6月2日 21時
