2日 ページ6
『潮の流れが速くなってないか？』
もう海の中に居て3日経つ。
今日になって潮の流れが速まっているのを本能的に感じた。
｢海流の中に入ったらしいな。あとは着くのを待つだけだ｣
『海流？』
｢政府専用の"タライ海流"。海軍本部、マリンフォード、エニエスロビーの中心に渦があってな。その渦からできる海流の事だ｣
16隊長殿が説明をしてくれる。
そんな海流があるのか、初めて知った。
『…やけに詳しいな、16隊長殿』
｢…長い間、色んな海を巡ってきたからな。知識もそれなりに付いてくるのさ｣
長い間、と言っても16隊長殿はまだ若く見える。
一体何時からこの船に乗っているんだろう。
少し気になる所だ。
｢イゾウ、ちょっといいか｣
｢ああ、行く。シャボンに近づきすぎんなよ｣
『子供じゃないんだ、手を出したりはしない』
｢ふ、だろうな｣
鉱石殿に呼ばれて16隊長殿は俺の傍を離れる。
皆、戦いに向けて最終調整に入っている。
今日になって、胸の辺りがとてもザワついている。
もしかしたら緊張、しているのかもしれない。
戦争自体初めてだから仕方ないが。
(胸騒ぎか…それともただの緊張か…はたまた)
───死を直感しているのか。
…止めよう、それは俺の望む未来じゃない。
声に出すと現実になってしまう。
口は災いの元。言葉は飲み込んだ。
｢ほい、スザク｣
突然、横から誰かの…いや、コックの腕が伸びてきた。
手に乗っていたのはおにぎり。
それも小さめの。
『…ありがとう』
くれ、と頼んだ覚えはないのだが、一応受け取る。
包みを剥がして早速食べた。
出来たてなのか、温かいし美味い。
｢美味い？｣
『…いつもどおり』
｢はは、ありがと｣
褒め言葉として捉えたらしい、礼を言われた。
今日の具は…焼魚か、好きな味だ。
｢食ったら気持ちも落ち着くよ。さっき顔、結構険しかったぜ｣
…どうやら気を使わせたらしい。
まさかその為に握ったのだろうか。
『悪い、考えたくない事を考えてて…もう忘れたよ、お前のお陰だ』
またありがとうと言えば、コックは優しく笑って頬を撫でてくれた。
優しい手だ、親父殿みたいで。
｢また嫌な事考えそうなら何時でも言えよ。甘いものでも作ってやるからさ｣
『…それは、嬉しいな』
それなら、嫌な気持ちも紛らわせそうだ。
後、2日。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 289人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆず招き猫 | 作成日時：2021年1月20日 9時
